まなざしの長さをはかって (2007年/伊)
・・・視線・・・
カルロ・マッツァクラティ監督「まなざしの長さをはかって」(2007年/伊)
まなざしの長さをはかって [DVD]
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今月20本目の映画(って結構観ているじゃないか)は、2007年製作の
イタリア映画「まなざしの長さをはかって」。原題は《La giusta distanza》
=《正しい距離》であります
ん~何とも深~い映画でした。わたしの為のような映画です。
まず地味、暗い、やるせない、笑えない。題材を考えるともっともっと
大袈裟に出来であろうところを、グッと押さた演出で、観客に潜考の輪を
投げるような映画なのです
そして少なからずイタリアに対して幻想を抱いているであろう日本人に
とっては、ばつが悪い作品でもありますが、言い換えれば、その生々しさ
は、人間に正しい《まなざし》を向け描いた映画であると言えるのでは
ないでしょうか
北イタリアのとある土地に代理教師として赴任してきたマーラという
女性を巡る108分なのですが、本作の視点の要にもなるジャーナリスト
志望の19歳の青年ジョヴァンニとチュニジア移民で後にマーラと恋仲
になるハッサンが、登場回数の上で主人公です。が、他の面々も
決して侮れないですよ。
左からハッサン、マーラ、ジョヴァンニ
様々な思惑に横たわる、それぞれが背負う溝の深さ。その溝を埋める
のは、人間自身に他ならないのに、踏み出すまでには時間を要して
しまう。結局のところ人間は、半周して引き返すことが多いのかも
知れないな。
現にハッサンもマーラへの近づき方が分からなくて、大きな誤解を
生むような行動に出てしまう。しかしそのわだかまりが解けた直後の
ハッサンとマーラの表情はとても煌いているのね。好きな場面です
マーラがクスクスを作った後は、ハッサンはミントティーではなく、
エスプレッソを淹れ、そしてマーラは・・・
劇中で気になったのはマーラが番茶を客人に振舞うシーンですね。
どうして番茶なんだろうと。で、またそれが不評なのね
発端は皆が彼女に惹かれたからか・・・開放さを持つマーラ
女優 ヴァレンティーナ・ロドヴィーニ Valentina Lodovini
1978年生まれ 伊ウンブリア州出身
「正しい距離の規則」、「一定のスタンス」という印象強い台詞が出て
くるのですが、人間関係の難しさは、計り知れなさにありますよね。
無害な距離を保っているだけでは、見えないことが多すぎる。。。
ほとんど台詞のない世話役のような男性が、ラスト近くで去り行く
ジョヴァンニに手を振るシーンは・・・感動しましたわぁ。最後の最後に
彼なりの《距離感》を見せ付けられた瞬間でした
黄色いパーカーの人(左)がその人です
一方こちらの黄色(左)は、いかにものイタリア男
多くの要素。しかし多くは語らずしての練って慎重な脚本、その
意外性、進め方、見せ方は見事。実に見つめ甲斐があった
イタリア映画でした
もう一度、観たい
ストーリー
小さな村に代理教師として赴任した美しい女性マーラ。彼女の美貌は
村人の関心を引いた。チュニジアからの移民で自動車工のハッサンは
彼女に恋心を、ジャーナリスト志望のジョヴァンニもまたマーラに
関心を寄せていたが。
キャスト
ジョヴァンニ・カポヴィッラ、ヴァレンティーナ・ロドヴィーニ、
アメッド・へフィアン、ジュゼッペ・バッティストン、ファブリッツィオ・
ベンティヴォリオ 他
編集パオロ・コッティニョーラ
音楽:ティン・ハット
撮影:ルカ・ビガッツィ
脚本:ドリアーナ・レオンデフ、クラウディオ・ピエルサンティ
カルロ・マッツァクラティ、マルコ・パテネッロ、スタヌー・グプター
原題:LA GIUSTA DISTANZA 約1時間48分