モンテーニュ通りのカフェ (2006年/仏)
・・・反撥・・・
ダニエル・トンプソン監督「モンテーニュ通りのカフェ」(2006年/仏)
モンテーニュ通りのカフェ [DVD]
¥3,205 Amazon.co.jp
17日。ピアノコンサート、舞台、オークション・・・それは同時にやって
来る。
それぞれの事情は大きく異なるものの、この映画の主人公たちは
皆、ギリギリ。あきらかに現状維持ではなく、現状打破を試みる
人達です
ある界隈の唯一のカフェとして登場するはパリ8区のモンテーニュ通り
のカフェ。そのカフェに集う様々な人々の人生模様を描いた本作は、
パリらしい皮肉とペーソスに溢れた作品。と言ったところでしょうか
憎まれ口をたたく主人公たちに混じり、《太陽》のような存在として
ヒロインのジェシカを演じるのは、「スパニッシュ・アパートメント」の
セシル・ドゥ・フランス。
女優 セシル・ドゥ・フランス Cécile De France
1975年7月17日生まれ ベルギー出身
<主な出演作品>
フリア(1999年) *日本未公開
スパニッシュ・アパートメント(2002年)
ぼくセザール 10歳半(2003年)
ハイテンション(2003年)
80デイズ(2004年)
ロシアン・ドールズ(2005年)
ジェシカは《モンテーニュ通りのカフェ》が初めて雇った女性従業員。
正確に言えば試用期間中の給仕係。4歳で両親を失くし婚約者には
逃げられ、身寄りは祖母だけという彼女は、本作の登場人物の中に
あって、イチバン持ち物が少ない人。
ジェシカにしてみれば、カフェに顔を見せるスター女優や人気ピアニスト、
アート収集家などの面々は正に別世界の人々
そんな彼らの不安、不満、重圧は成功を得た者の贅沢な悩みと言って
しまえばそれまでだけれど、セレブたちも所詮は人間。名声で解決できる
ことなど、人生のほんの一部に過ぎないというリアルさは良かったように
思います。成功に打ちのめされるというのは確かに良くあることなの
でしょうから。
マコンからパリに出てきたジェシカ勤務中出前も行くよ
ジェシカには嘆きがありません。何者でもないからこそ、何者にでも
なれるという自由と可能性からでしょうか。そういう意味で言えば、
定年退職間近のクローディも時間さえあれば、大好きな音楽に酔いしれ
仕事もこなし、自分の人生と折り合いをつけた点で人生の達人と言える
のかも知れない。
勤続は数十年。コンサートホールを仕切るクローディ
わたしが今年に入って最も多く対面したフランス俳優はアルベール・
デュポンテルでして、まだ2月の初旬ですが、「地上5センチの恋心」、
「Paris(パリ)」、そして本作と既に3本目。
しかし肩から腕にかけては別として、失礼だけれど、前半は顔が
ピアニストには見えなかったのですが、後半でやっとそれらしく見えて
きました
夢は森や病院で演奏すること悩める人気ピアニスト
俳優 アルベール・デュポンテル Albert Duponte
1964年1月11日生まれ 仏ヴァル・ドワーズ出身
監督は「ブッシュ・ド・ノエル」でデヴューをした女性監督ダニエル・
トンプソンです
映画監督 ダニエル・トンプソン Daniele Thompson
1942年1月3日生まれ 仏モナコ出身
<主な監督作品>
モンテーニュ通りのカフェ(2006年)
シェフと素顔と、おいしい時間(2002年)
ブッシュ・ド・ノエル(1999年)
多くの出演者の中で印象深い人物を選ぶとしたら、わたしの場合、
前出のクローディと収集家ジャック・グランベールです。ブランクーシ
の石彫刻《接吻》を観たレベッカが「恋がしたくなる」と呟いたその後で、
「作家が喜ぶよ」・・・・そう答えた彼にとても共鳴できたから。
芸術がただ商品として扱われることに憤りを感じるわたしにとっては、
そんな瞬間こそが芸術に対する賛美なのではないかと思えるん
ですよね。それに玄人の二言より、素人の一言ってところあるじゃ
ないですか・・・素敵なシーンでしたねぇ
また「年を取ると、過ぎた日より残された日を思う」というジャック・
グランベールの言葉もとても心に残りました。
強烈なのは知名度抜群のドラマ女優役のヴァレリー・ルメルシェ扮する
カトリーヌ・ヴェルセン。携帯の着信音は《サタデーナイト・フィーバー》の
テーマ曲。トリュフォー監督の作品に出る程、自分は年を取ってないって
言ってたけど、そんなこと言ったらイザベル・アジャーニはどうなるの
祖母と孫二人を侮るなかれ
フランス映画らしく、場面や対話が小粋で効いています。ラスト10分が
憎い。♪恐れずに前へ出ることが大切よ。それでわたしの
人生は輝いたのよ♪・・・最後の最後で、この素敵な一節を
まるで噛みしめるような抱きしめるような映画になっています
見渡す時を持つこと、そして踏み出すこと・・・それが全ての始まり。
誰にだって息抜きが必要だから、張りつめた心をなだめてくれる
馴染みのカフェがあれば、人生は尚のこと素晴らしいのだろう
ストーリー
有名メゾン、高級ホテルが並ぶセレブな街パリ8区のモンテーニュ通り。
田舎から憧れを抱いてこの街にやって来たばかりの女性ジェシカは
運良くカフェの名店《カフェ・ド・テアトル》で働くことに。普通は男性の
ギャルソンしか雇わないこのカフェも演奏会、舞台の初日、オークション
が重なるとあっては、緊急事態だったのだ。
キャスト
セシル・ドゥ・フランス、ヴァレリー・ルメルシェ、アルベール・デュポンテ
ル、クロード・ブラッスール、クリストファー・トンプソン、ダニ、ラウラ・
モランテ、シュザンヌ・フロン、シドニー・ポラック、ギョーム・ガリエンヌ、
アネリーズ・エスム、フランソワ・ロラン、ミシェル・ヴュイエルモーズ 他
編集:シルヴィ・ランドラ
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
撮影:ジャン=マルク・ファブル
脚本:ダニエル・トンプソン、クリストファー・トンプソン
原題:FAUTEUILS D'ORCHESTRE 約1時間46分
昨年、亡くなれたシドニー・ポラック監督が監督役で出演しています。
追悼の意味でも彼の作品をいつか紹介したいです
映画監督・俳優 シドニー・ポラック Sydney Pollack
1934年7月1日-2008年5月26日 米インディアナ州ラファイエット出身
プロデューサーでもある