『なんか、ハンバーグ食いたくね?』
やつは突然言った。
『早く。混むから。
早く!!』
夜の11時半だぜ。
混むかよ。
『つーか何してんの?
俺、支度終わったし。
早く着替えろよ。』
支度って、リング嵌めただけじゃん。
ああもう、食べたいなら一人で行ってくれよ、眠たいのに。
『それ~ぞれ~ひとつのライフ♪
それ~ぞれ~が♂#$☆%?*♪‥‥』
眠さとダルさの極限状態で走らせる車の中は、やつの好きな
『RIP SLYME』
が流れている。
つか、好きなら歌詞覚えとけよ。
ちなみに、
『広瀬香美』
も好きらしい。
理由は、
『故郷を思い出すから』。
いや、ゲレンデの歌だよ。
谷じゃねえよ。
『あと、どんくらいで着く~?』
ポテチをむさぼりながら、気怠そうに聞いてくる。
てか、ポテチ我慢しろよ。
『いらっしゃいませ~』
『どれにしよっかな~。
やっぱ、ライス付きがアツいよなぁ~。』
知らねーよ、食べたいもん頼めよ。
てか何だよアツいって。
鉄板に乗って来るから全部熱いよ。
『失礼します』
あ、ほらほら、店員さん来たよ、早く注文しろよ。
ほら、注文。
注文しろよもう、しょうがねえな、
えーとね、
えーっと‥‥
ぅええええええっ!!!!??
『‥‥フローレン‥‥』
聞いた事無い程、情けない声でやつは言った。
本人には、ちゃんと
『フ』
付けるんじゃん。
うっすらと涙目になっているムーミンに、フローレンは言った。
『テメー、店ん中で話しかけんじゃねえぞ。
アタシがテメーなんかと知り合いって思われたくないからな。
バイト終わったら話してやっから、それまで待てよ。いいな。』
低く、ドスのある声で素早く囁くと、
背筋をしゃんと伸ばして店の奥へ消えて行った。
ていうか、誰がどう見ても、知り合いだと思うだろうが‥‥。
これも女心というやつだろうか。
ムーミンを見ると、さっきと違う涙目になっている。
『‥‥な、なに見てんだよ、見んなよ。
つか、さっきのコイケヤポテチで、腹いっぱいになっちまったわ。
店、出ようか?』
【厚切りリッチカット】
を食べれば、そりゃ腹は膨れるだろうと思ったが、言わなかった。
それにしても、まさかこんな所でフローレンさんがバイトしてただなんて。
これがホントの、
『びっくりドンキー』。
だと思った。
つづく。(多分)