ティファニーからの帰り道。
駅に向かって、歩いていた。

私の両親は、今日の事が本当に起こっているのか、
まだ信じれない様だった。
私の父に至っては、口数が少ない人だが、もう無言であった。

私は彼と歩いていた。
私達の前を彼のお母さんが上機嫌で歩いていた。

ふとした時に、くるっと振り返った。

「春ちゃん、
今からなしとか…なしやで!!」

と、言われた。
あの時の恐怖といったら、文字で表現する事は出来ないと思う。
そしてこの情景は今でもすぐ思い出せる位インパクトが強い一言だった。

「結婚式終わったら東京へ行ったってな!」

「…私まだ今の職場で働き始めて、一年も経っていないのですが…」

「大丈夫、大丈夫。
辞めたって死なへんから!」

…そ、その通りである。

そんなこんなで、急遽結婚が決まった。
私、彼氏、そして私の両親は彼氏のお母さんに身を任せるしかなかった。

その日は、彼氏の家に泊まる予定だったので家へ行くと、
なんと既にゼクシィが置いてあった。
彼氏のお母さんはチェック済みで、全てを進めたのだと思った。
結婚が決まって、彼のお母さんはとても喜んでおり、
「リングピローは私に任せてね!」
と、それはそれは美しい、手の込んだリングピローを作ってくれた。

私はすぐに職場に退職したいと打ち明けると、
今まで週末は母と遊んでる、としか言っておらず、
彼氏がいないと思われていたので、びっくりされた。
そして二ヵ月後に退職した。

無事に結婚式が終わり、全てが落ち着いた頃、主人が言った。

「俺、子供大好きやから、早く欲しい!」

始めこそ、まだ歳も若いし、お金もないのでと、言っていたが、
毎日毎日、

一回り下のいとこの面倒をどれだけみたのか、
どれだけ子供が好きか、

ちゃんと面倒見るから、

と説得された。
 

そして、結婚式から五ヵ月後、主人の願いが通じて妊娠した。

喜んでくれたのだが、初めて病院へ行った時の会計が
約3万円ほどになった。
色々検査があったのだが、東京の病院の高さに二人共ひいた。
それを見て主人が、

「…これって毎回?」

と、聞いてきたのだ。
あんなに子供が欲しいと言っていたが、お金の事は全く頭になかった様だった。

「今からなしとか、なしやで!!」

と、私はお義母さんの言葉を引用した。

この親子は、全てを思い通りにする才能がある
逆らう事は出来ないし、寧ろ彼らの波に乗る方が幸せになれるのかも…

そう思わずにはいられない結婚生活の始まりだった。

しかし、今思えば、この時点で「自分の人生」を「主人の人生」と考え、
自分の人生は全て主人次第だと捉えていたと思う。
自分は、自分。
自分の人生は自分のものである。
どこにいても、どんな環境でも、自分は自分の人生を輝かす事が、
大切だと今だから思う。

馴れ初め編終わり。


ここまで読んでくれてありがとう♡
読んで下さった方が素晴らしい一日を送れる様願っております♡


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