私は年末に彼の家に向かって電車に乗った。

なんで私が付き合ってもいない彼の家に行かなければいけないのだろう…
向こうの親はどう思っているのだろう…
付き合ってもいない女が泊まりにくるって、やっぱりおかしい。

何度も何度も思った。
でも予定がないと言ってしまった手前、断る事も出来なかった。

彼はニコニコで迎えてくれた。
私は彼の家族に挨拶し、部屋に入って行った。

すると、彼のお母さんがいった。

「あほな犬がいるんやけど、匂いを嗅がせたら慣れると思うから、
ちょっと連れてくるね。」

そして、ドアを開けた瞬間、

私は噛まれた…。

まだ白い犬だなぁ、としか認識していないうちに、犬は私の手からぶら下がっていたのだ。

それを見た彼と彼のお母さんは、

「立って!立って!!」

と、言った。
私は立った為に、太ももを噛まれ、お尻も噛まれた。

二人共足で犬を外へ出そうとしている。
この犬は興奮したら、飼い主でも噛むのでこうするしかなかったそうだ。

犬がドアの外へ行き、落ち着いた所で、痛みを感じた。
手をみると、流血していた…。

腕も噛まれていたけど、コートをまだ脱いでいなかったので助かった。
しかし、この怪我は手当てをして貰わないと、と思ったので、再度、

「いたっ!」とリアクションをした。

彼のお母さんが、

「ごめんね。手当しようね!
大丈夫、狂犬病ワクチンは打ってあるから!

と、言われた…。
犬を飼った事がなく、噛まれると狂犬病になる可能性は知らなかったので、怖くなった。

手の手当はしてもらったが、さすがにほぼ初対面でお尻と太ももの事は言い出せず、
トイレで一人で傷のチェックをし、痛みに耐えた。

その日の夜。
 

彼が初めて女の子を連れてきたという事で、お母さんとおばあちゃんはせっせとお料理をしてくれていた。
ふと、おばあちゃんと目が合った。

「お腹すいてるの?白ご飯よそってこようか?」

断ることも出来ず、おばあちゃんはいそいそと、山盛りの白ご飯とお漬物を用意してくれた。
本当に『山盛り』という言葉がぴったりな綺麗な形だった。

私が、白飯にお腹を膨らませた時、

なんとお寿司が出てきた。

私は、一貫は食べたが、それ以上食べる事が出来なかった。

そして、次は、ちらし寿司も出てきた。

私は、もう食べる事が出来なかった…。

後から来た彼のお父さんは、

「お寿司嫌い?」と聞いてきた。

私は、「好きです…でもお腹がいっぱいで…」とだけ答えた。

お父さんは、不思議な顔をされていた。
まさかこの前に白飯をいっぱい食べたとは思っていなかっただろう…


ここまで読んでくれてありがとう♡
読んで下さったあなたが素敵な一日が過ごせる様に願っています♡
 

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リンゴを無農薬で育てた第一人者。
試行錯誤を繰り返し、極貧で首を吊る為に入った山で見たものはー。
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