「じゃあ、行くよ。」

「わかった。」

私は、普通の学生の菜奈。

お父さんの転勤で転校の繰り返し。

だから友達なんて全くいない。

それで、今まで住んでいた香川県から和歌山県へ。

もう、7回以上転校しているから寂しくない。

「良い学校だと思うよ。」

(また、新しい学校に行っても暇だろうな。)

いつ、また転校するか分からないから学校へ行っても暇なだけ。

それで、また違う所へ転校。

ただ、その繰り返しだ。

そして何時間もかけて、和歌山県に到着した。

「いつから学校行くの。」

「明日から。」

「わかった。明日学校行く。」

翌日、そして学校へ。

「どうも。これからよろしくお願いします。」

自分の席に行き、窓を眺める。

隣の席の男子の消しゴムが落ちた。

【君が笑えば 誰もが笑顔になる ずっと一緒 仲間だから】

上手な字でポエムが書かれている。

「すごい。」

私はその消しゴムをじっと見た。

「あ。返さないと。」

男子の机の上に消しゴムをそっと置いた。

(あのポエム、本当にあの人が・・・?)

私は授業に集中できなかった。

・・・私は、消しゴムの他にその男子も好きになってしまった。

(あの人と、いつか別れないといけないのかな。)

初めて転校するのが寂しいと感じた。

あの男子とずっと授業ができると思えば・・・。

胸が強く締め付けられる。

転校したくないなんて、初めて感じた。

「はぁ・・・。」

ため息を大きくした。

悲しい気持ちで、新しい学校生活の1日目が始まった。

そして1ヶ月・・・。

「ごめん。また転勤で・・・。」

「え・・・?転校するの・・・。」

「本当に悪いと思っている。ごめん。」

その一言で頭の中はすぐ真っ白になった。

あの男子と別れる事になる。

気持ちも伝えられずに・・・。

「荷物はもう片付けておいたから、明日滋賀県ね。」

香川県から、和歌山県、そして滋賀県へと引っ越す。

香川県へ行く前も、引越しを繰り返していた。

寂しい。

「もう夜だから寝なさい。」

「・・・わかった。」

布団の中で、思いっきり泣いた。

涙が沢山溢れている。

水のように。雫のように。

たくさん泣いた後、ゆっくり目を閉じて眠りについた。

翌日・・・。

「もう忘れ物は無いね。」

「うん。」

寂しい気持ちのまま、駅へ。

「じゃあ、駅へ行くよ。」

「うん・・・。」

あの男子の事が胸の奥に深く深く残っている。

涙がでてきた。

寂しい。

寂しくて胸が痛くて息苦しくなる。

涙を流しながら私は歩く。

駅に到着。

切符を買った後、電車が来るまで待った。

そして電車が来た。

「待て!!!」

あの男子が駅に。

「え・・・?」

「あげるよ。」

男子が私にくれたものは、あの消しゴム。

「あ・・・ありがとう・・・。」

涙が止まらない。

感謝の気持ちでいっぱい。

「まもなく発車いたします。」

ドアが閉まった。

「また来いよな!!!」

「うんっ・・・!」

電車が動いた。

男子が走ってくれた。

電車を追いかけて・・・。

そして電車は駅を離れていった。

「ありがとう・・・。」

涙を流しながら、私は笑った。

私は、あの男子ととても小さい片思いをした。

初恋・・・。

私は、あの青く澄んだ青空に願う。

いつか、あの男子と・・・。

また逢いたい。

またいつか、逢えるを信じて。

【君が笑えば 誰もが笑顔になる ずっと一緒 仲間だから】

Fin