実はスターバックスにはマニュアルがないんです。その代わりにあるのが、「グリーンエプロンブック」と呼ばれる、サービスのビジョンを共有するためのものです。そこには次の5項目が挙げられています。
歓迎する
心を込めて
豊富な知識を蓄える
思いやりを持つ
参加する
実にシンプルな言葉で、スターバックスとしてのサービスのビジョンを共有しているんですね。さらにはこのビジョンを実現するために柔軟な対応ができるよう、各店舗に多くの権限を預けています。
「マニュアル」ではなく、「ビジョン共有と権限移譲」でサービス品質を高めている。これをサービスサイエンスの視点から見てみるとCS向上についての重要なヒントが浮かび上がります。
先に結論を申し上げますと、(マニュアルが悪いというわけではなくて)「サービスコンセプトに合ったCS向上の努力の方向」というものがあるということなのです。
「失点をなくす努力」と「得点を増やす努力」の2つ

「失点をなくす努力」とは、お客さまを怒らせないことを重視したもので、マニュアルの活用やマナー教育がその代表例に当たります。この種の努力はこれまで多くの企業でも実施されてきたのではないでしょうか。
しかし今の時代、この「失点をなくす努力」だけでは、高いCSを獲得してリピーターを獲得することが難しくなってきました。そこで注目されているのが「得点を増やす努力」です。これは、お客さまの期待に応えたり、思いもよらないサービスを提供したりして大満足や感動をしていただくというものです。
そしてこれを実現するために必要な施策の1つが、「ビジョン共有と権限移譲」による柔軟なサービスの提供になります。これを行うことで、別の記事「CS向上のコツ『どの事前期待に応えるか』」でいうところの「個別的事前期待」「状況で変化する事前期待」「潜在的事前期待」に応えて高い評価を得ることが可能になるのです。
ただし、「CS向上の努力の方向」というのも、サービスのコンセプトに合った方向性でなければなりません。やみくもにマニュアルを廃止して、ビジョン共有と権限移譲をしたところで、成果につながるとは限らないのです。つまり、マニュアルが非常に有効なサービスもあれば、そうでないサービスもあるということです。大切なのは、自社のサービスがどういったサービスの種類・コンセプトなのかをしっかりと定義して、「それに合った努力は何か」をしっかりと考えるということです。