断捨離していたら懐かしい作業ノートが出てきた。

 

備考欄の走り書きであの日を思い出した。
 

かなり前になるが、私はテレビのベンチ修理をしていた。

 

毎日様々なテレビが運びこまれてくる。

 

タバコで画面が見えない位に汚れた物や夫婦喧嘩の末に画面が割れてしまった可哀想なものなど様々。

 

隣の修理担当者が作業台に上げたのはシールだらけの赤いかわいらしいテレビ。

 

よく見ると、画面の枠の所に「〇〇くん看護婦さんの言う事をちゃんと聞くんですょ」と紙が貼ってあった。

 

入院中の子供さんが見てるテレビだろうか。

 

修理の完了を連絡すると電気屋さんが直接引き取りに来た。

 

担当者は尋ねた「これ病室のテレビですよね」

 

「うん、子供さんのだけど難病なんだ」

 

そんな状態とは思わなかったから、かなり重苦しい空気になった。

 

彼は電気屋さんにちょっとだけ待ってもらいテーブルで何かを書き始めた。

 

そしてお母さんの紙の下に貼った。

 

「〇〇くん早く元気なってね」

 

やはり何かを祈る優しい気持ちがないとこれは出来ないな。 

 

(新聞投稿掲載文)