羽生結弦 | 青龍のブログ

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難度か完成度か 五輪連覇狙う羽生の選択は?
2017/5/4 6:30 日本経済新聞


 4回転ループを跳ぶと決めた2016~17年シーズンの羽生結弦(ANA)は、シーズン終盤の3大会連続でループを含む4回転ジャンプをフリーで計4回成功し、18年平昌五輪へいい形で締めくくった。だが、ショートプログラム(SP)、フリーともにミスなく終えた大会はなかった。「五輪で金メダルを取りたいと思ってきた」と語る羽生は4年間の集大成に向け、難しいジャンプに挑み続けるのか、それともプログラムをまとめる方向にシフトするのか。


逆転優勝を果たし、世界選手権の表彰式で笑顔の羽生。左は2位の宇野、右は3位の金=共同
 SPで1、1、2、2。フリーでは2、2、3、4。14年ソチ五輪から毎年、羽生が跳ぶ4回転ジャンプの回数は増えていった。昨季、フリーで4回転を4回跳ぶ猛者、金博洋(中国)が登場すると、15、16年世界王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)は現状(SP、フリー計5回)を維持して完成度を高める方向へと重心を移したが、対照的に羽生は難度を上げて金、宇野昌磨(ともに計6回)、ネーサン・チェン(米国、計8回挑戦)ら10代選手に負けじと4回転ジャンプの回数を増やしてきた。

■「好き嫌いの問題ですよね」

 4回転を跳ぶか、プログラムの完成度を高めるかは「好き嫌いの問題ですよね」。4月、3年ぶりに世界選手権を制した後、羽生はこう語った。「ジャンプをきれいに跳べれば(ジャンプとジャンプの間のつなぎである)トランジションもいいと思われ、演技構成点も評価される」とも。このまま10代の3選手とのジャンプ合戦を続けるように見えた。

 今回の世界選手権では、4回転ジャンプの失敗が響いてSP5位。フリーは4つの4回転をいずれもクリアに決めた。「完璧」といえる演技で世界歴代最高の223.20点を記録し、同じく4回成功した2位の宇野に8.75点差、合計321.59点でSP1位との10点差を逆転した。改めてジャンプの持つ得点力を確信した一方で、羽生はあることにも気づいている。「ジェーソン・ブラウン(米国)は4回転なしで7位に入った。(4回転をフリーで3回しか跳ばない)パトリック・チャン(カナダ)にも得点が出ていた。この辺は新たに考えなくてはいけない」

 その3週間後、深く考える事態が起きた。世界国別対抗戦で、SPで4回転が一つも決まらず7位。フリーでは4回転に5回挑戦して4つ成功させて1位になったが、本人も「SPへの苦手意識が出てきた」とこぼしたほど。「考えてみれば、(昔の)僕って難しいジャンプを跳ぶというより、スピンや表現などのトータルパッケージでプログラムを見せるタイプだったんですよね。気持ちよく跳べるもの、そういうものを追求してもいいかな」

 プログラムをまとめる方向に振れたように見えたが、フリーの翌朝の練習では4回転ルッツやフリップの練習に取り組んでいた。「来季に入れることはない。ジャンプはスケートでしか味わえないし、(できたときの)達成感にひかれる。難しいジャンプを練習するのは楽しいから」。何をどう跳ぶべきか、試行錯誤しているようだった。


五輪連覇を狙う羽生は平昌へどのようなプログラムを準備するのだろうか=共同
 ソチ五輪以降、フィギュアスケートは競技として急速に進化した一方、表現面が置き去りにされがちになった。4回転を跳ぶ選手ほど「トランジションで少し(振りつけを)抜いている。いけないんだけれど、ステップで休む感じになっている」(宇野)という状態にある。フィギュアのもう一つの醍醐味である「感情」があまり観客に伝わらず、「観戦」ではなく「鑑賞」の楽しみが薄れているのは否めない。

■技への加点と演技構成点の戦い

 国際スケート連盟は平昌五輪後に演技構成点に配慮したルール改正をにおわせており、審判員も今季は演技構成点を微妙に下げてきた。羽生のフリー自己最高得点である今回の世界選手権で、4回転ジャンプを4回(難度の高い順にループ、サルコー2回、トーループ)跳んでノーミスの演技に対し、9人の審判員が5項目について採点する演技構成点の10点満点は45個のうち12個にとどまった。それ以前の自己最高得点だった15年グランプリファイナルでは、4回転3回(サルコー、トーループ2回)のノーミスの演技に対し、10点満点は24個あった。4回転ジャンプへの新鮮さが薄れてきた現在、「技への加点と演技構成点の戦いになってくる」と宇野も予測する。

 「伏兵」だった4年前の羽生のように、宇野ら10代の3選手は王者を上回るため全力で攻めるしかなく、目指す方向はシンプルだ。羽生も「すべての選手が僕の追いかける背中です」と挑戦者を強調するものの、前回覇者の胸中は10代の3選手ほど単純にはいかない。

 平昌五輪に向けて、羽生は16~17年シーズンのジャンプ構成を大きく変えず、プログラムをまとめにいくのが妥当な選択という意見もある。しかし、サッカー日本代表の本田圭佑や五輪2大会連続2冠の北島康介氏のように、羽生の最大の武器は「自分が絶対1番になる」と信じることができるメンタリティーだ。手堅さより挑戦する気持ちを常に持ち、攻める方が性に合っているだろう。そうしたプログラムを準備できるかどうかが、五輪連覇のカギになるかもしれない。

(原真子)

http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXMZO15999200S7A500C1000000/