実の親が亡くなった時も
実の姉が亡くなった時も
旦那である父が息を引き取る瞬間も
私は生まれてから母の涙を見たことがない
一人誰もいない所で密かに涙しているのは知っていたけれど…
唯一弱い母を見たのは父が火葬される瞬間
参列者は一段高い場所で見送る
私と母だけが棺の側にいた
だから参列者には私達の背中しか見えない
ゴロゴロと棺が焼き場に入れられドアを閉められた瞬間
『こんなの嫌だ』
と一瞬肩を下ろし背中を丸めてた
涙していたかは分からない
きっと泣いていたと思う
本当に一瞬だけ
母の背中を擦った時にはもう普通に戻っていた
普通に笑顔で参列者やお坊さんと話をしている
昨日の夕方家に帰ると
テレビもつけず
ソファーにぼーっと座っていた母
どうしたの？と聞くと
『〇〇さん死んじゃったよ…』
と同時に流れる涙を必死で拭いていた
私が生まれて初めて見た母の泣き顔と涙
気丈な母がとても小さく見えた
母は幼いときに父を亡くし
私がまだ幼く若い頃に母を亡くし
唯一残った姉も母が30代の頃に亡くしている
家族が皆亡くなってしまった
そんな頃に知り合ったのが今回亡くなってしまった女性
歳の離れたその女性を姉の様に時には母の様に慕っていた
私達が今の家に引っ越してからも一週間に一度は電話が掛かってきたり掛けたりして一時間以上話していた
40年来の心の友
息子さんから訃報を聞いた時言っていたそう
床につきながら母に会いたい、母に会いたいと言っていたと…
もっと会いに私が連れていってあげれば良かった
今日も母は悲しさを必死で堪えながらいつもの様に動いている
でもその身体はやはり元気がなく小さく見える
口にするのは思い出話しばかり
思い切り泣きたいんだろうな…
泣いても良いんだよ
お母さん…
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