主治医の先生は、私より1歳か2歳年上。冗談とかをあまり言わない、朴訥とした印象の先生で、きつーーーーいことも淡々と語り、あまり感情を表に出さない人。


この先生が饒舌になったのは、先月、アメリカで行われた血液・白血病学会に出席し、帰国した翌日だけ。

アメリカに住んでいた私はアメリカの話なら大抵は付いていける。先生はあまり行く人のいないニューオリンズの感想を楽しそうに報告してくれた。私もニューオリンズは行ったことがあるから(と言っても10年も前だけど・・・)話に乗ってくるので嬉しかったのかもしれない。

若干アメリカかぶれして帰ってきたな、、という印象も受けた。


やっと打ち解けた、と思ったのもつかの間、次からはいつもの先生に戻っていた。。。


年が近いこともあって、最初はこの先生で大丈夫なの?と心配にもなった。

でも、今はこの先生でなんてラッキーだった、と思う。


何故だか知らないけど、この先生は不思議な力を持っている。


CVからの出血が止まらない、と看護師がアタフタ、2日も3日も血をダラダラ流していた私のところに来た主治医の先生、なんと圧迫だけで止血して見せた。

あれだけ出血がひどかったのだから、止血だって一時的なもの、と思いきや、それ以降、一度も出血することはなかった。


薬の副作用のせいで便秘気味になった日のこと、滅多に便秘になんてならない私は、回診に来た先生に「便秘の薬」の処方をお願いした。そして先生が去った3分後、なんと便秘は解消し、結局薬は飲まなかった。(処方はされたんだけどね。。)


毎回するマルク、私にとって、マルクは痛くないもの、と思っている。

しかしそれは、研修医によって見事に覆された。

マルクが痛くなかったのは、主治医の先生が上手だからであって、痛くない検査、なわけではなかったのだ。

研修医、レジデンス、シニアレジデンスと3人がかりで対応された時、「なぜか骨髄液が引けない」と30分の奮闘の結果、外来にいた主治医の先生が呼び出されて処置室にやってきた。

しかし、先生が「取れないんだって?」とカーテンから顔を覗かせたその瞬間、シニアレジデンスの先生により骨髄液が取れた。

それまでの格闘がまるでウソのように。

「よかったよかった」と、何も手を出さず、僕が来た意味はあったのかな、、くらいのノリで主治医の先生は5秒でその場を去って行った。来た意味は多いにありましたよ、先生。

その後、7日間は足を引きずりながらでないと歩けず、1ヶ月間は痛みがあり、もう二度と主治医の先生以外のマルクはやめて、と懇願した。


病友さんの主治医は私の主治医の先生とは違う。その病友さんが、たまたま私の主治医の先生にCVを入れてもらうことになった。いつもと違う先生、というだけで緊張していた病友さんだが、病室に戻ってきて、「あの先生、はっやいね~!!」と驚きの声をあげていた。

そう、私の主治医の先生は処置が的確でとにかく早い。患者に余計な負担をかけない、ということにおいて、完璧なまでに技術を持っている。

マルクは2分で終わる。CVを入れるのは10分で終わる。痛くない、しかし使う麻酔は驚くほど少ない。(これは看護師から聞いた。)


さてさて、今回、CVはさっさと抜き、今は抹消からルートを取って点滴をしている。

1月4日に取ったルート、今日7日目でもまだ漏れる気配なく健在。

もちろんこのルートは主治医の先生が取ったルート。通常は2~3日で漏れるようになって差し替えるのに(ひどい時は1回の点滴でダメになる)、驚異的な日数を更新している。

いつまでこの血管でいけるだろう。。。


技術と不思議な運、両方を備えた主治医の先生に当たった私は、きっと治るな。いや、必ず。