専業主婦は憧れの職業? 林真理子さんの『野心のすすめ』から考える女性の生き方。 | HappyWomanのすすめ。

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2013年に読んだ本の中で、個人的にずば抜けて面白かったのは、林真理子さんの『野心のすすめ』(講談社現代新書)です。

野心があるからこその苦労、どん底から這い上がって手に入れたもの。
人生のいい部分も悪い部分も存分に味わった林さんだからこそ表現できる言葉の数々。
いま彼女が見ている景色の素晴らしさに、読みながらゾクゾクしました。
ほんと、すごい人です!

本書には、林さんがいかに野心を持ち、それを形にしてきたかが書かれていますが、「女性の生き方」についても多く触れられています。
中でも、「専業主婦」という生き方についての林さんの考えは、すごく納得できるものでした。

出産からしばらくは育児に専念したとしても、その後、子どもが幼稚園・小学校に進んだ後も仕事をもたない女性は、私のまわりにはほとんどいません。
だけど、専業主婦になりたいという「願望」だけは高まっているという不思議。
「専業主婦」という生き方ができる女性と、できない女性は、一体何が違うのでしょう??


■専業主婦は夢の職業

2012年末、内閣府が「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成24年度)についての結果を発表しました。
この中で、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、「賛成」・「どちらかといえば賛成」を合計した「賛成」と答えた女性は51.6%でした。
3年前の調査(41.3%)よりも10ポイント以上増加しています。
内訳を見ると、なんと20代女性が50代の賛成を超える43.7%。
時代に逆行しているように感じますが、子育て世代に突入する前の女性の約半数が、「専業主婦」として家庭に入りたいと考えているのです。


■専業主婦になれるかどうか

専業主婦が憧れの職業とはいえ、全員が専業主婦になれるわけではありません。
まずは「自分に向いているかどうか」を知る必要があります。
それまでバリバリ働いていた女性が結婚・出産を機に退職し、専業主婦になることがありますが、少し経つと飽きてしまい、家事もそんなに好きではないし、子どもと1対1の生活にも耐えられず、むしろ病んでしまう、というパターンをよく耳にします。

林さんは、専業主婦に向いている人の素質について、こんな言い方をしています。

「専業主婦に向いている人、家族の世話だけやっていて幸福に生きられる人に必要な素質とは何でしょうか。
それは、野心の親戚でもある『自己顕示欲』の量が少ないことではないかと思います。
 人にはそれぞれ生まれ持った自己顕示欲の量があります。その数値が生まれつき20の人もいれば、80の人もいる。20以下の人であれば、専業主婦として家の中のことをきちんとやって、身近な人にだけ褒めてもらえれば満足できるし、穏やかで幸福な日々を送ることができるでしょう」


キーワードは「自己顕示欲」のようです。
でも、「私は自己顕示欲が低いので専業主婦に向いている」と思ったところで、全員が専業主婦になれる、あるいはその状態を持続できるのでしょうか?

今は3組に1組の夫婦が離婚する時代です。
経済的に一生安泰で、一生浮気をせず、子育てにも協力的。
子どもが巣立った後も、一生添い遂げようと思える、そんな男性に巡り合えるかどうか…。

あぁ、自分が仕事で成功するよりも、よほどハードルが高いと思ってしまうのは、私だけでしょうか。


■「絶対安全専業主婦」とは

男性の稼ぎだけで生きていけるのは稀な世の中ではありますが、林さんが「絶対安全専業主婦」と名付けている、トップオブ専業主婦は確かにいます。

麻布や田園調布に住み、旦那の稼ぎでママ友とランチをし、子どもを有名私立学校へ通わせ、エステに行っていつもバリっとキレイにしている。
さらに、夫の浮気や借金とも無関係で一生を終えるのです。

林さんは、絶対専業主婦になれる人は、
「たとえばものすごい美貌を持っているとか、稼ぎの良い人と知り合うチャンスを得るために努力したとか、あとはやはり類い稀な運を持っているかということでしょうね」
とのこと。

おそらく20代女性が憧れているのはこの「絶対安全専業主婦」だと思いますが、ここになれる確率は、「何千人に一人」の層だと林さんは言います。


■「専業主婦のリスク」をどうとらえるか

類まれな数%に入らない限り、やはり今の世の中で専業主婦という生き方を選択するのは「リスクがある」と言わざるを得ないのでしょうか?

先日、しばらく会っていなかった大学時代の友達から、「飲みに行こうよ!」とメールが入りました。
彼女は大学院に進み、社会に一度も出ずに大手商社マンと結婚しました。
2人の子どもに恵まれ、専業主婦として楽しく生活しているように見えました。
まさに、彼女は「絶対安全専業主婦」だと私は思っていたのです。

しかし、それまで子育てに追われ、一度も飲みに行ったことのない彼女からの突然の誘いに、「これは何かあったな」と思いました。

会ってみると、飲み始めて数分で、「旦那が浮気してたの」と彼女が話し始めました。

ある日、彼女が部屋の掃除機をかけていたところ、“たまたま”棚に掃除機が当たって、上に置いてあった夫の1年前の手帳がバサリ。
そして、“たまたま”開いたページには、なんと、2日に1回の頻度で女性の名前がズラリと並んでいたそうです。
さらに、「もう一度会いたい人、○○さん。エッチが最高だった」などとも書いてあったとか。

なんと、わきの甘すぎる旦那さん。
問い詰めたら旦那さんは認めたそうで、「今はもうやってない」と、さらに「これからも絶対にやらない」と謝罪し、事は収まったと言います。
子育てに追われて、2人目が生まれた後から夫婦生活が途絶えていたという友達は、「その事件で旦那も男だったのか!と思い出したんだよね。それで夫婦生活も復活したの」と。
いやいやいやいや、許しちゃダメでしょ、奥さん!

しかしながら、私を飲みに誘うくらいなので、彼女も悶々としているわけです。
女としてのプライドを傷つけられた彼女は、ネットや本でSEXのテクニックに関する情報をあさって、いかにその「エッチが最高」という浮気相手を上回れるか!ということに情熱を燃やしておりました。
だけど、そんな旦那とエッチをしたところで、もはや楽しくも気持ちよくもない……。

彼女が繰り返し言っていたことは、
「結婚するのは簡単なんだよ。でも、維持するのが本当に難しいの!」
「男の人はね、結婚すると安心するんだよ」


一度も社会に出たことのない彼女は、2人の子どもを連れて離婚をするという選択は考えられないようでした。
「私も、何か仕事、しようかな……」
結婚するときには、こんな未来は想像していなかったはず。
絶対安全専業主婦になり損ねてしまった彼女は、この先どうなるのか……。

結婚から10年経って襲ってきた青天の霹靂。
もちろん、子どもを連れて離婚することが正解だとは言いません。
そんな苦労をするくらいなら、「人間としては好き」だと言う旦那さんと添い遂げた方が幸せかもしれません。
それでも……。
自分を傷つけた旦那さんと、この先も一緒に生きていくとして、「この選択しかできないから我慢して一緒ににいる」と思うのか、「いつでも出て行けるけど、敢えて自分の意思で一緒にいる」と思うのかは全然違うと思うのです。


■女性が仕事をもつことの健全さ

いろいろ考えてきた結果、専業主婦を目指すなら、「絶対安全専業主婦」になるしかない。
それが無理なら、パートでもいいから何か仕事をして社会とつながっておく。
これが幸せにつながるのではないかと私は思います。

女性が仕事をもつことの良さについて、林さんはこのように言っています。

「私はやはり、どうしたって女性は仕事を持って、働くべきだと思っているんです。専業主婦のリスクということではなく、人生の充実感や幸福のために。自分の仕事が積み重なって、ある日、何かの結果が出るという楽しさは、恋とか愛ともまた違う、もっと人間的な深いところに根ざしている。それに、働いていると良いことは、自分の名前で勝負できること。自分の力なら、たとえ低い評価でも自分の努力不足だと納得できるけれど、夫の地位や肩書で評価される人生は辛い」

そして、

「自分の食い扶持(ぶち)は自分で稼ぎ、もしも、夫といるのがイヤになったらすぐに離婚できる経済状況の中で結婚生活を続けているからこそ確認できる、夫婦の愛情ってあると思うんです」と。

なるほど、深いですね。
女性が経済力をつけることは、離婚して自分で生きていく力を身に付けるためだけではないと思います。
夫の稼ぎのせいで子どもに十分な教育を受けさせられないとか、もっと子どもが欲しいのにお金がなくて産めない、とイライラするのではなく、「経済面でも夫婦が協力し合って生きていく」と女性も思考を切り替えることの方が、幻の専業主婦を目指すよりも健全な気がします。
それに、もし夫が病気になって働けなくなったとしても、自分に稼ぎがあれば、支え合って生きていくことができます。

子育て中に資格をとって、社会復帰できる準備をしておくなど、努力できることはたくさんあります。
大変だけど、その先には「自分の人生を人のせいにしない」という幸せがある。

先日、40歳でキャリアカウンセラーの資格を取ったというシングルマザーの女性に会いました。
彼女は「年を重ねたことが強みとなる仕事をしようと思った」と言いました。
カッコイイ!と思いました。
カウンセラーのように、人の相談に答えるような職業は、重ねてきた年齢と経験により説得力が増します。
何歳になっても「もうこの年だから無理」と諦める必要はないのだなと思いました。

自分の考え方や行動次第で、人生は変えられる。
結婚や育児で得られる幸せと、仕事をして経済力をつけるという幸せと、その両方を手に入れられる時代なのだと思います。



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