楽しみにしていた本が届きました。
新進気鋭のアメリカ文学研究者古井義昭先生による、これまで英語で出版されていた論文が収録された和書『誘惑する他者—メルヴィル文学の倫理』が出版されます。
今現在、卒論、修論に取り組んでいる、特に文学を専門とする人にはとてもいい本だと思います。また、19世紀アメリカ文学やハーマン・メルヴィルを勉強しようとする人にとっては、必読書といってもいいでしょう。
古井先生は英語での単著があります。こちらは博論をもとにしたもので、ソロー、エミリー・ディキンソンなどが論じられています。
いま自分は、英語論文はもちろんのこと、日本語の論文の書き方も勉強しているので、どのようにして論文の質を高めればよいのかをこの本を常に手元において考えたいと思います。
「あとがき」で著者が「特に思い入れ深い」とあげている2本の論文は修論や、修士1年のころの期末レポートが下敷きとなっているそうです。わたしもこれから上っ面を撫でた甘い論をまとめたにすぎない修論のなかの1章を書き直して、きちんとした論文にしたいと取り組んでいます。
いま現在すごい研究者である先生にも「若い頃の苦い思い出」があることや、研究を続けていくモチベーションがどのようなものであったかに触れて、自分はまだこの研究を始めて6年が経っただけなので、ここからがスタートだなと新たに気合が入りました。
以下の内容は法政大学出版会のウェブサイトからの転載です。
https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-49522-9.html
内容紹介
『白鯨』『ビリー・バッド』「バートルビー」をはじめ、安易な解釈を許さない数々の問題作で知られる19世紀米国の大作家メルヴィル。その主要作品群を精読し、誘惑すると同時に理解を拒絶する他者、配達不能郵便(デッドレター)のモチーフ、孤独や共同体や帝国主義的暴力の問題など、書くこと/読むことの根源に関わるテーマを徹底的に掘り下げる。読解への最高の手引きとなる一冊、ここに誕生!
著者プロフィール
古井 義昭(フルイ ヨシアキ)1982年生まれ。エモリー大学英文科博士課程修了(Ph.D.)。現在、立教大学文学部教授。専門は19世紀アメリカ文学。
単著にModernizing Solitude: The Networked Individual in Nineteenth-Century American Literature(University of Alabama Press, 2019年/日本アメリカ文学会賞・アメリカ学会清水博賞)、共著に『脱領域・脱構築・脱半球──二一世紀人文学のために』(小鳥遊書房、2022年)、『モンロードクトリンの半球分割──トランスナショナル時代の地政学』(彩流社、2016年)などがある。
目次
序 章
第一部 他者を求める──孤独な水夫たち
第一章 『白鯨』における寂しい個人主義
第二章 『イズラエル・ポッター』における倫理的寂しさ
第三章 痕跡を書き残す──『ジョン・マーと水夫たち』 における孤独の共同体
第二部 他者を見つける──不気味な自己像
第四章 他者を貫く──『タイピー』における個人と共同体
第五章 「誰も自分の父たりえない」──『ピエール』におけるデッドレターと血縁
第三部 他者を取り込む──帝国的欲望
第六章 時間の暴力に抗う──「エンカンタダス」における不確かな未来
第七章 差異を超える──「ベニト・セレノ」における認識の詩学
第四部 他者を覗く──沈黙の裂け目
第八章 秘密の感情──『信用詐欺師』における障害と公共空間
第九章 バートルビーの机──情動理論とメルヴィル文学
第十章 ビリーを撃つ──媒介される内面
あとがき
引用文献
索引