永世中立国スイスの徴兵制度  Military of Switzerland | えりぴ&ヤニックのスイスHAPPYLIFE8年目inヴァレー州

永世中立国スイスの徴兵制度  Military of Switzerland

スイスの徴兵制度について、先日スイスで男性への徴兵制を廃止すべきかどうかを問う国民投票が行われ、廃止は73%を超える予想外の圧倒的多数で否決されました。

 

「スイス、徴兵制廃止を否決 国民投票、伝統を支持」

スイスで22日、男性への徴兵制を廃止すべきかどうかを問う国民投票が行われ、地元メディアによると、廃止は反対多数で否決されることが確実となった。

 国民皆兵制の武装中立を維持するスイスでは近年、「他国から現実の脅威にさらされているわけではなく金の無駄遣いだ」として徴兵制の廃止を求める声が出ているが、国民の多くが伝統的な制度を支持した形だ。

政府も国防能力を脅かすとして徴兵制廃止に反対を表明していた。 MSN産経ニュースより

このニュースを見て永世中立国のスイスなのに徴兵制度なんてあったの?って驚かれた方もいるかもしれませんが、私もスイスに来て初めて知ってびっくりしました。




スイスに来たことがある方は、駅で軍服を着て銃を背負った若い男子グループ(電車内でお酒飲んで騒いでいるなんてことも・・・)を見かけてびっくりしたことがあるかもしれません。私もスイスなのになんで?って最初は驚きました。
彼らは20歳-22歳くらいで、15-17週間の最初の兵役の訓練中なんです。週末には家に戻れるので土曜日の朝か、日曜日の午後によく見かけます。

徴兵制度のスイス・・・実は周りで兵役をしている人がほとんどいなくって(その理由は後ほど)、スイスに住んでいながら全然知らない点が多いので、いくつかの情報を参考にざっくりまとめてみようと思います。


スイスは永世中立国なので、他国同士の戦争にはスイス軍は干渉しません。
他国がスイスの領土を侵して攻め入ってきたときのみ、徴兵制の義務期間にある20-35才の男子、または徴兵制を終えた男子(予備軍は40万人)が国防のために戦います。

他国の侵入などの非常事態が発生すれば、6時間以内に30~40万人の兵士が動員できる態勢が、普段からできていて、スイス国内の道路・橋・橋梁・堤防などの公共施設は、有事には破壊して障害化できるように細工がされ、民間の飛行場も軍用に転換できる。
農地も機関銃の陣地や、対戦車陣地がいつでも造れるような形になっている。
人の住宅も、腰から下の壁は小銃弾の貫通に耐えることができるくらい強度の強い壁になっており、家を建てる方向も、向きも、それぞれ有事の際に監視ができるように、陣地的な形でスイスの住宅は計画的に造られている。地下に核シェルターもある建物も多い。

スイス人のほとんどは非武装中立で平和が守れると思っていないのです。


スイスの男性市民は、18歳時に兵役を務められる能力があるかどうかを調べる身体検査が義務付けられています。

そこで不合格と診断されると兵役免除となるが(代わりに年収の3パーセントの税金を30歳まで納めます)、合格者は20歳(多少の延長はできる)に15-17週間の初任訓練を受けてライフル(実弾は支給されない)など個人装備一式(徴兵終了まで自己管理)が支給されます。
それから毎年3週間の補充講習を受け、20歳から数えて通算で合計260日間の兵役に就かなければならない。
身体検査に不合格でも介護、警備、医療などの奉仕(代替役務)を行えば減免または免除となる。


初年度の訓練の内容は、銃や化学兵器の取り扱い隊列の組み方など。
その後、毎年約3週間ずつ約10年間ほどの訓練という名の研修があります。

基本的には1年に3週間政府から通知が来た時期に行うが、学業や海外赴任などの理由で時期の延期は可能。ただし、それは延期であって免除はされない。


参考文献
スイスの徴兵制存続に見る日本人との国防意識の違い
http://www.data-max.co.jp/2013/09/24/post_16455_hmg_1.html

国民皆兵は時代遅れか、見習うべき成功例か
http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=36518684


兵役義務がある男子で兵役に行っている人は実際は60%なんです。私の周りで兵役に行っている男性本当に少ないです。40%どころか90%行ってないかもしれません。ただし私の周りには外国人や多重国籍※の友達が多いからかもしれませんがスイス人国籍の男性でも理由をつけて免除している人が多いです。(※多重国籍でもスイス国籍がありスイス在住だと兵役義務があります)
あと私が住んでるフランス語圏(特にジュネーブ)は兵役反対がドイツ語圏より多いというのもあります。
その理由は武器を手に取りたくない平和主義者だったり、徴兵は時間の無駄だとか、キャリアに影響するとか、軍の訓練での集団行動が嫌だとか、訓練がきついからなどいろんな理由があるみたいです。

最初の訓練は3ヶ月以上もあるし大学も1年休学するか就職も1年遅れてしまいます。 合計260日間も訓練しなくてはいけませんしね。
また、兵役が終了するまで毎年3週間の訓練で仕事を休まれるのは本人も企業も迷惑だったり、でも逆に是非兵役をしている人を優先して雇いたいという企業もあるのでさまざまのようです。
また最初の15-17週間の訓練はかなりきついらしく、私の知り合いは訓練をしてやっぱり兵役免除にしてもらえばよかったと後悔したそう。

また、10年前までは兵役免除になるのはよっぽどの理由(兵役に行けないほどの病気や宗教上の理由など)がないと難しく、徴兵を逃れるような事をすれば、刑務所行という時代もあったそうですが(30年前の話ですが、実際訓練中に何度も脱走して短期間ですが刑務所行になった知り合いがいます・・・)、10年前からは医者から簡単(どの程度かは分かりません)診断書を出してもらい兵役免除になることができるらしく、だから実際に兵役義務がある男子で兵役に行っている人は実際は60%なのかもしれませんね。政府も兵役免除になった人たちからは税金を取れるからというのも変化の理由らしいです。
確かに年収3%の税金は結構家計には痛いですよ・・・。でも今年で税金納めるの最後でした。 
 

訓練先はスイス各地のどこになるかは分からないらしく、フランス語圏の人がドイツ語圏またはその逆というケースもあり、訓練先でドイツ語が分からなくてすごい苦労したという話も聞きます。でも3つの言語があり、政治的風潮も文化も全然違う地域出身の若者が長い訓練を共にして仲間意識が芽生えてスイス国民であるという意識が高まるという話も聞きますし、それはすばらしいことだと私は思います。それにしっかり鍛えられますしね!

スイスに住んでいながらあまりよく知らなかったスイスの徴兵制度についてだらだらと書いてしまいましたが、みなさまにもスイスの徴兵制度とその裏話?知ってもらえたら嬉しいです!
 


まだまだ知らないことがいっぱいのスイス、なかなか面白いです。
 

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兵役に行ってる友達にもらったチョコレート(軍隊用なのでカロリー高め。そしてまずかった・・・)