夫君と久しぶりに「あのこと」について話した。

きっかけは夫君が久々にみせた「苦虫を噛んだ」ような表情。

すかさず、私は「何か隠してない?白状することあるでしょう?」と問い詰めた。

「俺の携帯、覗いたでしょ?それがちょっとショックだった。しばらく平穏だったし、幸せな感じだったから、かよちゃんの捜査活動はもうなくなったとばかり思ってた…。」

それが彼からの言葉だった。

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その約1時間前のこと、今回の旅行に同行してない長男から夫君の携帯に電話があった。そのあと、「ママに代わるね」と言って夫君は携帯を私に手渡した。夫君は用事で10分ほどホテルの部屋を出て行った。長男との電話を終えても夫君はまだ帰らない…。
じゃ、ちょっとだけ見ちゃおっか…。
うん、ちょっとだけ見ちゃおう。

結果はシロだった。浮気女の痕跡は何もなかった。

そして夫君が戻ったとき、私はまだ彼の携帯を手にしてた…。

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「ゴメン。携帯見たよ。確かにこの1ヶ月半、穏やかで幸せな日々を送ってきた。でもさ、それで夫君に対する信頼が完全に回復したわけじゃない。確かに少しずつ信頼は取り戻してる。でもそれって多分、1日に0.1パーセントとか、その程度。これから何年もかかるよ。夫君のこと信じられるようになるまで。」

私がそう伝えると、夫君は少し寂しそうな顔をして、こう言った。

「かよちゃんに信じてもらえないのはわかる。でも、俺は今、すごく楽に生きられるようになった。幸せだって感じられる。また『一つの世界』だけを生きれるようになったから。これだけは信じて。彼女との連絡は本当にずっとない。」

夫君は不倫中、2つの世界を行き来して苦しんだという。

そして私は、夫君がこの2つの世界を水面下でまだまだ維持してるんじゃないかという不安を捨てきれずにいた。

6週間前、2度目の水面下が発覚して、そのあとで「かよちゃんのもとに戻りたい」と泣いたあと、夫君は急展開で私だけに愛情を寄せてきた。毎日のように「かよちゃんといれて幸せ」という言葉を連発する。

でもそれを真っ向から受け止められない私もいた。信じるのが怖かった。

でもこの夜、夫君と話して、私の中の氷がゆっくりと、本当にゆっくりと溶け始めた。

私の気持ちが「信じよう」じゃなくて、「信じられる」に変わっていく…。

最後の壁がなくなった…。

そんな気がした。