大した喧嘩もしなかった私たち夫婦。
20年の月日を経ていつの間にか水や空気、
兄と妹みたいな、いて当たり前の関係になっていた。

夜の生活はレスとはいかないまでも、
子育てと仕事、家事に疲れた私が夫の誘いを断ることは多かった。

やがて夫は海外で事業をおこし、
2週間毎のパターンで向こうとこちらを行き来した。

そして、私たちの間の隙間はいつの間にか大きな溝となってしまっていた。

そして夫は彼女に出会い、恋に落ちた。


発覚の1週間後、私は海外出張中の夫にメールを書いた。

私たちがお互いを見失いかけていたこと、
これは私にも責任がある。あなたなしの
生活はまだ考えられないし、考えたくない。
だから、あなたがそちらの女性と別れて
くれるなら、私はあなたとやりなおしたい、と。

数日後、彼は電話で彼女と別れたこと、そして
私とやりなおす意思があることを告げた。

その後、帰国した彼と毎晩毎晩話し合いの日々が続いた。
激しく泣き崩れる私に、夫は正直に彼女とあった経緯、彼女のこと、
2人の時間、別れについて根気よく話した。彼も泣きに泣いた。

そして彼女との別離の苦しさを訴えた。

「頭では別れられても心で別れられない」と。

何度も口論した。

何時間も話し合った。

知り合って20年間、あれほどまでに話し合った時期は
なかったと思う。


その後、夫は様々な感情に勝てなくなって一時壊れてしまったが、
それでもあの激しくぶつかった時期は、私たちにとって、
なくてはならない時期だったと私は思っている。