私は、ピアノ教室を運営する中で、退会者が続き、新規入会者も減少していく状況に直面していました。当初は、保護者とのコミュニケーションは必要ないと考え、むしろ避けていた時期もありました。しかし、その考えが間違っていたことに気づくまでには、多くの経験と学びが必要でした。

親の会を作るまでの気づき

気づきは、いくつかあります。一つ目は退会した生徒の保護者との対話からでした。ある日、その保護者から「練習ができない」という話を聞いた時、私は即座に解決策を提案しようとしていました。しかし、その保護者が本当に求めていたのは解決策ではなく、その悩みや感情を共有し、理解してくれる存在だったのです。
 

そして、二つ目は、保護者の些細な行動の変化でした。いつもと違う態度や反応、それらの小さなSOSに気づかないまま、退会につながってしまうケースを何度も経験しました。その時は「自分のすべきこと」に囚われ、保護者に対して腹を立てたり、悲しんだりしてばかりいました。また、「続くかどうかわからないから」と言って楽器の購入を戸惑う保護者への対応でも失敗を重ねました。私の中にある「ピアノレッスンはこうあるべき」という思い込みが、保護者との関係を損ねていたのです。

 

現在も、退会された保護者でもできる限りつながりを持ち続けるよう努めています。時には話が通じる時もあり、それで生徒が復帰してきたこともありました。そうした関係性を大切にすることで、教室運営の新たな視点を得ることができています。

 

また、発表会やステップに向けての準備を通じて、保護者の協力があった時としなかった時の違いを実感しました。保護者の価値観を理解し、その視点に立って対話することで、協力関係が生まれやすくなることを発見したのです。

現在の取り組み

今年から親の会を始めましたが、まだまだ手探りの状態が続いています。最初は不安もありましたが、保護者の方々の温かい反応に支えられ、少しずつ形を作っているところです。

 

現在は、LINEオープンチャットでの日常的な情報共有を行っています。保護者の方々の話題は保護者の考え方を理解するステップだと思います。特に、お子さんへの関わり方や練習に対する考え方など、保護者それぞれの価値観が垣間見える瞬間を大切にしています。

新しい発見と課題

まだ試行錯誤の段階ですが、保護者との会話から新しい気づきを得ることも多くあります。例えば、「練習時間が取れない」という言葉の裏には、お子さんの習い事の優先順位や、家庭での時間の使い方に関する保護者の考えが隠れていることがわかってきました。

 

一方で、課題もまだまだあります。保護者同士の関係づくりをどう促進していくか、オンラインでのコミュニケーションをどう活性化させるか、保護者の経験をどう共有していくか。解決すべき問題はたくさんあります。

これからの展望

それでも、この取り組みを始めてから、保護者との距離が近くなったことは確かです。ピアノ教育について、より本質的な対話ができるようになってきました。今は小さな一歩かもしれませんが、この積み重ねが、きっと教室全体の成長につながっていくと信じています。

 

これからも保護者の声に耳を傾け、共に学び合える場を作っていきたいと思います。完璧を求めるのではなく、一つひとつの対話を大切にしながら、ゆっくりと、でも着実に前に進んでいきたいと考えています。退会された方々とのつながりも大切にしながら、より良い教室づくりを目指していきたいと思っています。

 

私が親の会を作るまでに至った歩みを、このブログを通して、ピアノ指導者の皆様と共有していきたいと思います。