(株)インプレッション カラー・イメージコンサルタントの菅原令子です。

 このブログでは、いつもの生活が楽しくなったり、いつもの風景が素敵に見えるような「色」にまつわる様々なお話をしています。

 

先日NYのホストファミリーを訪ねた時の話をしましょう。もう30年来、家族のように思ってきた人たちです。その母親が体調を崩していることを知り、お見舞いに行きました。

 

訪ねてみると、今彼女は病気のため自由が利かず、本来はとってもおしゃれな女性なのに、着る服も自分では自由に選べない日々を送っているようでした。そこで私は外出前の用意の時に、ありったけの彼女の服を取り出して「どれが着たい?」と聞きました。すると、彼女は紫とマスタードイエローの小さなハートがたくさん描かれている、楽しげなシルクブラウスを選びました。

 

彼女は華やかで、すこしユーモアのある、そのブラウスのイメージにぴったりな女性。それを着て、髪をきれいに整え、「メイクもする?」と聞くとしたいと言うのでメイクをし、香水をつけ、アクセサリーをつけ、最後に紫色のカシミアの柔らかなストールをふわっと羽織ると、彼女の金髪に紫やゴールドが色が映えて、それは美しく、病気なのも忘れてしまうほど。久しぶりに会った時は心なしか諦めたような様子だった彼女でしたが、外出する前に玄関の鏡に映った自分の姿を見る彼女の目に、以前の輝きが戻っているのが見てとれました。病気になっても彼女は彼女。いつだって、彼女は彼女でいなくてはならないのです。

 

週末に家族全員でブランチに行くことになり「外はすこし寒いけれど今日は何を着る?」と聞くと、今度はシルクのスカーフ素材のリバーシブルのジャケットを選びました。片面は赤と黄色の柄、もう片面は白地の柄模様ですが、赤の方を選びました。そのときの写真を見た人に「病気なのにこんな派手な格好を?」と聞かれました。たしかにインパクトのある洋服で、病気の人が着そうな服ではなかったからそう思うのも無理はありません。

 

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✴︎一緒に散歩した、セントラルパーク内のボートハウスレストラン。そよ風を頬に受けながら、新緑を楽しみました。

 

 

 

 

もう片面のおとなしい方を選ぶこともできた彼女が、赤い方を選んだのはなぜか?もともと彼女はおしゃれで特別タフなニューヨーカー。積極的で好奇心にあふれ、面倒見がよく、同時にいくつものことをこなすアクティブな女性でした。闘病中でも、快活で楽しい彼女の精神は変わらないのでしょう。病気だからといって毎日モノトーンを着ていたら、彼女らしくないし、楽しくないのではないでしょうか。いつものようにおしゃれした彼女は、とても優雅で素敵でした。

 

もしかしたら、彼女はそういった色を選ぶことによって、実は、日本から来た私を元気にしようとして着てくれたのかもしれません。また、そうやって自分自身を奮い立たせていたのかもしれません。彼女の着ていたカラフルで鮮やかな色は、見る人を明るく楽しい気持ちにさせてくれる色だからです。

 

その写真を見て「幸せそう!」とおっしゃる方もいらっしゃいました。明るく楽しく見える色は幸せに見える色でもあります。実際、「こうして皆でまた集まり美味しい食卓を囲むことができるのは幸せなこと」と、色を通して彼女が伝えてくれていたのかもしれませんね。