君九齢 ・「九齢公主」~隠された真実~
陸雲旗視点で見る悲しさ
――守りたかったのに、守れなかったもの
陸雲旗という人物を、
ただの冷酷な権力者として見ることは簡単です。
しかし「君九齢」という物語は、
彼をそう単純には描きません。
彼は、歪んだ形ではあっても、
間違いなく九齢公主を深く愛していました。
牢に囚われた九齢を救い出すことができず、
火事の中で彼女を失った――
その事実は、
彼の中で「過去の出来事」ではなく、
一生消えない自責として生き続けていた
はずです。
だからこそ、
九齢の姉や弟が皇帝に疎まれ始めたとき、
彼は自分にできる唯一のやり方で
守ろうとしました。
皇帝に逆らうことはできない。
正面から守る力もない。
それでも、九齢が大切にしていたものを、
せめて失わせたくなかった。
その結果が、
姉・九黎との婚姻であり、
弟を皇帝の疑念から遠ざけるための
立ち回りでした。
第17話で、陸雲旗が
九齢堂に武力をもって踏み込む場面も、
彼の冷酷さだけを表している
とは言い切れません。
名前を奪うこと。
居場所を消すこと。
それは君九齢となった九齢公主を
傷つける行為である一方、
亡くなった九齢公主を
**彼なりの“守るための選択”**でもあった。
陸雲旗は決定的に自由ではありませんでした。
彼は常に、
「皇帝の意志によってのみ動く存在」であり、
自分の感情だけで行動することを
許されていなかったのです。
愛しているのに、
守りたいのに、正しい形では守れない。
九齢が処方箋に書いた文字を見た瞬間、
陸雲旗はきっと悟ったはずです。
目の前にいる彼女は、
皇帝に従って
「排除すべき存在」なのか、
それとも
「守るべき存在」なのか。
選択を突きつけられる側に立っているのだと。
陸雲旗の悲しさは、
悪であったことではなく、
**最後まで“自分の意志で愛しきれなかったこと”**
にあります。
だからこの物語の中で、
彼は救われない。
けれど、その救われなさこそが、
「君九齢」という作品が描く、
最も痛切な人間像の一つなのだと思います。
最後までお読みいただき
ありがとうございます。
ドラマを楽しむ一助となれば幸いです💕
