―『美男〈イケメン〉宮廷〜麗しき4人の皇子たち〜』―
「このヒロインは、
この世界に向かない人だ」
ヒロインは、
薬を煎じている時や薬膳を作っている時、
料理をしている時など、
よく
“周囲が見えなくなるほど集中している”姿
を見せる。
誰かが近づいて声をかけて、
「えっ?」と驚いて振り返るあの仕草——。
一見すると、
集中力がすごい
真面目で一生懸命
そんな可愛らしさの演出に見える。
けれど、
物語を追っていくほどに、
私はこの描写に
別の意味を感じるようになった。
この集中仕草は、
ヒロインが
「周囲の空気を読む人ではない」
という性質を示しているのではないか。
彼女は、
- 人の裏を読むことも
- 駆け引きをすることも
- 言葉を選んで身を守ることも
あまり得意ではない。
良く言えば、まっすぐで誠実。
悪く言えば、危ういほどに無防備。
その性質が、最もはっきり表れたのが——
皇帝の前で、
ユンジュを妃に迎えたいという意向に対して
放言を放ったあの場面だった。
正直、思わず心の中で叫んでしまった。
「いや、それは言っちゃダメでしょ!」(笑)
あの瞬間こそ、
「このヒロインは、
宮中という世界に向かない人だ」
と、強く実感した場面だった。
宮中とは、
- 一言の失言が命取りになる場所
- 正論が正解にならない場所
- 思いや善意こそが、最大の弱点になる世界
そこにおいて、
- 思ったことを素直に口にし
- 権力も立場も読まず
- 皇帝にさえ真っ向から意見を述べる
——こんな人物は、
本来生き残れるはずがない。
そして、
その危うさに誰より早く気づいていたのが、
第四皇子だった。
ヒロインの放言を聞いた瞬間の、
- あの顔色の変わり方
- 「マズい」と全身で悟った表情
- とっさに場を繕って事を収めた、
その後の安堵の顔
——今でもはっきり焼き付いている。
あの表情は、
「彼女の言葉が本当に危険だ」
と理解している人間の顔であり、
同時に、
それでも、
彼女を守ろうとしてしまう男の顔
だった。
思えば、
ヒロインの“集中しすぎて
周囲が見えなくなる性質”と
第四皇子の
“人を信じ過ぎて
政治の闇が見えなくなる性質”は、
とてもよく似ている。
二人とも、
- 宮中という世界が求める冷酷さを持てず
- 人を疑いきれず
- 自分より、他人を守ろうとしてしまう
この場所には、あまりにも優しすぎる。
だからこそ、
二人は惹かれ合った。
そして同時に、
だからこそ、
報われない運命を歩むことになった。
ヒロインの集中仕草は、
可愛さのための演出ではなく、
- 才能の証であり
- 純真さの象徴であり
- そして
- “宮中に不向きな人格の伏線”
だったのだと、今は強く感じている。
宮中ドラマでは、
皇帝の前で放言する場面など
滅多に描かれない。
だからこそ、
あのシーンは、
この物語が
“ありきたりな宮廷ドラマではない”
ということを、
はっきりと示す
名場面だったのだと思う。
そして改めて思う。
このヒロインも、
第四皇子も、
同じ種類の人だった。
——宮中に向かない、
優しすぎる人たち。
最後までお読みいただき
ありがとうございます。
ドラマを楽しむ一助となれば幸いです💕
