君九齢 ・「九齢公主」~隠された真実~
ラストに逃げ去った宦官は、
なぜ誰にも追われなかったのか
『君九齢』最終話。
皇帝の悪行が暴かれ、
すべてが明るみに出ていくその最中、
皇帝のすぐそばに仕えていた宦官が、
誰に止められることもなく、
そっと場を離れていきます。
私は初めてこの場面を見たとき、
強い違和感を覚えました。
あれほど皇帝の“裏の手足”として
動いていた人物なのに、
なぜ誰も追わないのだろう、と。
けれど、この沈黙こそが
『君九齢』という作品の深さを
物語っていました。
宦官は悪の黒幕ではなく、
皇帝の“意思を実行してきただけの存在”。
自ら悪を企てる主体ではなく、
権力に使われた
「歯車」だったのです。
だから物語は、
彼を裁こうとはしませんでした。
責める対象は“人”ではなく、
その背後にある“権力構造”
そのものだったから。
宦官は捕らえられず、
許されることもなく、
ただ静かに歴史の影へ消えていく。
それは無罪放免ではなく、
むしろ
「誰からも裁かれず、
誰からも救われず、
語られることもなく消えていく」
という、
最も重い結末だったのかもしれません。
中国ドラマは、
正義と悪を単純に断罪するのではなく、
人を動かす“仕組みそのもの”を
描こうとします。
『君九齢』のこの宦官の退場もまた、
「悪は個人から生まれるのではなく、
構造から生まれる」
という、作品全体のテーマを
言葉ではなく沈黙で示した
名場面だったように感じます。
見返すほどに、
何気ない一瞬に
込められた意味の深さに気づかされる――
それがこのドラマの
最大の魅力なのだと思います。
最後までお読みいただき
ありがとうございます。
ドラマを楽しむ一助となれば幸いです💕
