「陸雲旗という男が背負った、
     損得の論理のゆがみ」
         ~君九齢 より


――君九齢・物語の奥に潜む
        “心の警告”――

中国ドラマ「君九齢」は、
父である前皇帝の死の真相を追うため、
身分も名も変えて生きることになった

九齢(君蓁蓁)が、


医術と知恵を武器に

真実へ迫っていく物語です。

 

登場人物の一人ひとりが、
ただの“役割”としてではなく、
“心の奥にある傷や願い”を

抱えながら動いているため、


物語は進むほどに深みを増し、
視聴者の心に

静かに沁みていきます。

 

その中でも、

後半にかけて存在感を増すのが  陸雲旗


武徳司の長として冷徹に見える彼は、
実は九齢公主への深い想いを

胸に秘めており、
その矛盾が物語を大きく揺らしていきます。

 


陸雲旗という男の
  “二重構造”が物語を動かす

一見すると沈着で、判断の早い実務家。


しかしその内側には、
かつてひそかに心を寄せていた

九齢公主への未練が、
ずっと燻り続けています。

 

君蓁蓁として現れた九齢を前にして、
その理性と感情は

綱引きのように揺れ動き、


やがて彼自身でさえ

制御できない方向へ流れていきます。

 


損得を優先するように
      なってしまった心

陸雲旗は、
政治の世界で生きるために

“感情を切り離す”術を身につけてきました。


冷静な判断を続けるうちに、
いつの間にか 

心が感じるより“損得で考える癖”
彼の中で大きくなっていきます。

 

その結果、
「愛している」と言いながら

相手を手段として扱ってしまう。


守りたい気持ちがあるのに、
守れない選択をしてしまう。

 

本来なら

相反するはずの二つの思いが、
彼の中でねじれて混ざり合い、
行動が“歪んだ形”で現れてしまうのです。

 


九齢との取引に見える
       “乖離した愛”

第26話。

朱讃を救うために、
九齢が「自分が都を離れる」

という条件を突きつけた場面。

 

陸雲旗はそれを“勝ち”だと

受け取りましたが、
そこには

愛の温度はありませんでした。

 

それは、
純粋な感情と

損得計算が混ざり合ってしまった証

 

理解しようとすればするほど、
彼が

“心をどう扱っていいのか分からない人”

であったことが浮かび上がります。

 


陸雲旗という存在が伝える
      静かなメッセージ

陸雲旗は

ただの悪役ではありません。


むしろこの物語の中で、

もっとも “心の迷路” を背負った

人物です。

 

損得だけで生きること。
感情を押し込めて生きること。
安全な選択ばかりを続けてしまうこと。

 

それは、

生き延びるためには必要なはずなのに、
いつか心の大切な部分が

失われてしまう――


そんな危うさを、

彼の姿が静かに語っているように

思います。

 


最後に

「君九齢」は、


復讐というテーマの奥に、
“心の願い”や

“本当の自分として生きること”が
丁寧に描かれた物語です。

 

陸雲旗という人物の深層を知ることで、
さらに物語全体の陰影が濃くなり、
一人一人の選択が胸に響いてきます。

 

彼の不器用で痛ましい愛は、
私たちにそっと問いかけてきます。

 

――感情の声を、置き去りにしていませんか?
――損得だけで、心をごまかしていませんか?

 

物語を観るたびに、
そんな深い余韻が静かに残っていくのが、
「君九齢」という作品の

魅力なのだと思います。

 


 

 

最後までお読みいただき

ありがとうございます。

 

ドラマを楽しむ一助となれば幸いです💕