―『美男〈イケメン〉宮廷
〜麗しき4人の皇子たち〜』―


皇子たちを気遣い、
 静かに身を引くヒロインの心 ―
「身分」と「司薬司」の背景から読む名場面

「殿下が来るところではありません」

この言葉は、

”ゲームの攻略対象を変えなければいけない”

というヒロインの辛く悲しい思い、だけでなく

さまざまな背景も含まれた言葉なのです。

 


第12話。

毒を盛られ風邪も重なって体調を

崩したヒロインを心配し、


第十一皇子、第二皇子、

そして最後に第四皇子が

司薬司まで足を運びます。


しかしヒロインは、

どの皇子にも必ずこう告げます。

 

「殿下が来るところではありません。

       どうかお戻りください」

 

一見すると

「病に関わる部署だから

皇子にはふさわしくない」といった
礼儀上の理由のように見えます。


しかし、ここにはもう一つ、

もっと切実で静かな思いが隠れています。

 


●司薬司という場所が、
    距離感を象徴している

司薬司は、薬を調合し、

病を扱う“現場”です。


皇子たちが気軽に訪れる場所ではなく、
病気や毒の処置をする

“陰の領域”でもあります。

 

ヒロインはそこに勤務する以上、
皇子たちの世界とは隔たりがある——
そんな意識が

さらに彼女を慎ましくさせています。

●身分の低さを自覚している
     ヒロインの“線引き”

劇中でも描かれているように、
皇帝は太子から第四皇子の

ヒロインへの想いを聞いた際、

こう言い切ります。

 

「身分が低すぎる。許されぬ」

 

古代中国の宮廷において、
医者・医女は

「専門技術者」でありながら、

政治的身分は高くありませんでした。


命を預かる重要な職でありながら、

貴族階級には属さず、
“宮中の一職員”として

扱われていたのです。

 

そのため、

ヒロイン自身もよく分かっています。

 

自分は皇子が近づくべき立場ではない
自分がここにいれば、

相手に迷惑がかかるかもしれない

 

だからこそ、

どの皇子にも必ず穏やかに距離をとり、
静かに、しかし確固とした線引きで

「帰るように」促すのです。

●控えめな一言に宿る、
       深い優しさ

「殿下が来るところではありません」

という言葉は、
皇子たちを遠ざける冷たさではなく、


むしろ

“相手の立場を守るための優しさ”

そのもの。

 

身分をわきまえ、
自分の気持ちを押し隠し、
それでも皇子たちの身を思って

口にする一言。

 

その控えめな佇まいは、
後に宮廷の大きな渦へ巻き込まれていく

皇子たちとの関係を
静かに暗示しているようでもあります。

 


 

 

最後までお読みいただき

ありがとうございます。

 

ドラマを楽しむ一助となれば幸いです💕