―『美男〈イケメン〉宮廷
〜麗しき4人の皇子たち〜』―

「時間のズレ」と「記憶のズレ」
――公子不可求より 

 

再び出会っても、すぐには気づけないのは、
時間のせいではなく、
心がまだ、現実と夢の境を彷徨っているから。

けれど、見つめ合ったその瞬間、
言葉より先に魂が思い出す。
——ああ、この人を、私は知っている。

 


ゲームの中と現実世界、

この二つの世界の時の流れを考えると、

ちょっと不思議に感じたことがあります。

それは、
ヒロインが再びゲームの中に戻った時、

第四皇子とガシ国の公主ジアレンとなった

ヒロインの”記憶のズレ”です。

第四皇子は、

3年前に突然消えてしまった

ルーレンジアを覚えていて、

 

公主ジアレンを見た瞬間に

「ルーレンジアに似ている」

と心の中でつぶやきました。

しかし、それに対してヒロインは、

現実世界から わずか3日で

ゲームの世界に入りましたが、

 

仮面で顔半分が隠されているとはいえ、

護衛になりすました第四皇子に

気づきませんでした。

 

実はここには、

“記憶の深さと魂の共鳴の違い” 

というテーマが隠されています。

 

第四皇子は、

3年という「時間の積み重ね」を経て、
ルーレンジアという存在が

心の奥深くに刻まれていました。


そのため、

ジアレンを見た瞬間、
“理屈ではなく、

魂が知っていた” のです。


—「あの人だ」と。

 

一方でヒロインは、
現実世界からわずか3日という

短い時間で戻ってきています。


これは、つまり、

記憶の整理や感情の輪郭が

まだ“現実の感覚”の中にあった


そのため、

目の前の第四皇子がかつての人だと、
すぐには“心が思い出せなかった” 

のです。

 

これは、
愛が「時間」で育つのではなく、
「魂の目覚め」で再び輝くものだ

ということを示しているようにも思えます。


つまり、

第四皇子はすでに魂の記憶で

ルーレンジアを覚えており、
ヒロインは再び心の奥で

その愛に気づく過程を歩いていた──


そんな二人の“時差のある愛”が、
この場面に静かな不思議さとして

描かれているのだと思います。

 

だから、
第四皇子が、顔を見た瞬間に

「ルーレンジアとそっくりだ」

と思ったのに対して、

ジアレンとなったヒロインは、

転びそうになって支えられた時や

食事をしている雰囲気で

第四皇子を感じ、記憶の整理をしていた、、、。

「記憶は、離れてこそ刻まれる」

という感覚が、

この物語の深いところに

流れています。

 

人は、

そばにいるときには気づかない

ぬくもりや想いを、
離れてはじめて「記憶」という形で

抱くようになります。


第四皇子にとってルーレンジアは、

長い年月の中で失われた“姿”ではなく、
心の奥に生き続ける存在 でした。


だからこそ、

再び彼女が現れた時に、

理屈ではなく“魂が反応”した。

 

一方でヒロインにとって、
それはまだ“再生しきれていない記憶”の旅。


支えられる手の感触、食卓の沈黙、
その一つひとつが、

彼女の心の奥に残っていた愛の記憶を
ゆっくりと呼び覚ましていったのだと思います。

 

「愛する人を思い出す」ということが

頭ではなく心の再会として

描かれているところが、

より一層美しさを際立たせています。


距離と時間が、

むしろ愛を深く確かなものにしていく。
そんな“愛の記憶の法則”が

ここに息づいています。

 


 

そばにいるときには、気づけなかった。
離れてはじめて、心は名を呼び始める。

記憶は距離の中で息づき、
再び出会うために、静かに光をためている。

 


 

 

最後までお読みいただき

ありがとうございます。

 

ドラマを楽しむ一助となれば幸いです💕