「バクモン学園」が最終回を迎えました。

数えてみると、僕たちは7回ほど出演させて頂いておりました。

しかし、この間は本当に夢を見ている気分でした。

というのも、

人にはそれぞれ、「あの人のようになりたい」という雲の上の存在があると思うのですが、

それが僕にとっては爆笑問題の太田光さんだったからです。


思い返せば、25才のときに、初めて田中さんと番組でお会いすることができました。

28才のときには、太田さんの奥様光代さんとお会いすることもできました。

その都度興奮したのは言うまでもありませんが、

いつまで経っても太田さんとはご一緒することができませんでした。

田中さん、光代さんと少しずつ太田さんに近づきながらもご本人まで辿り着けない僕のお笑い人生は、

神様から、

「今のお前じゃ、まだ太田さんには会えないよ。」

と静かに諭されるいるようで、

もっと修業しなければ!

と今一度、奮起鼓舞したものでした。


そして去年の3月、若手芸人が多数出演する爆笑問題さんの新番組が始まるということで、僕たちも呼んで貰うことになりました。

楽屋挨拶のとき、初めて太田さんにお会いできたときは、極度の緊張で声が出なくなってしまい、相方が僕の分まで自己紹介を肩代わりするという有り様でした。

そして本番が始まり、

放送禁止用語を連発する太田さん。

女性客をドン引きさせる太田さん。

30分番組なのに10分以上かかるエピソードトークを5~6本話す太田さん。

それを雛壇から眺め、

テレビの経験が浅い僕ですら、

「この人は何でこんなに生産性のないことをやっているんだろう。」

と疑問に思いながらも、

僕が憧れ僕の人格形成に最も影響を与えたそのままの太田さんの姿に感激し、目を潤ませておりました。

中学時代、爆笑問題さんのテレビに夢中になっていた僕は、気がつけば30才になっていました。

でもこの番組の衣装に袖を通し、初めて爆笑問題のお二人にお会いできたとき、


身も心もあの頃の自分に戻っていました。

学校が終わり、家に帰ると学ランのまま爆笑問題さんのテレビを見ながら晩御飯を食べていた、あのときの少年そのままでした。

何度目かの収録終わりに、太田さんの楽屋にマジックペンと太田さんの本を持って行き、馬鹿みたいに、

「サイン下さい!」

とおねだりをしました。

今考えても本当にイタい奴です。

芸歴が20年も下のぺーぺーが、ちょっと番組に出たからってお笑い界のレジェンドにサインをねだる。

何度考えても本当にイタい奴です。

それでも僕の神様は笑いながらサインをしてくれました。


この本は宝物です。

そしてこのとき太田さんの楽屋で太田さんと雑談した数分の時間は、誰にも奪うことができないかけがえのない宝物となりました。


僕はこれからも、爆笑問題さんと何度でも共演できるよう芸を磨かなければいけません。

そして中学時代、太田さんの、権力に怯まず大物に楯突き社会問題を斬る毒舌に魅了され、自分もそうなりたいと憧れた幼き自分に伝えたい。

「お前は30才で爆笑問題さんの番組に出られるよ」と。

そしてそのときの映像を見せると、15才の僕はきっとこう言うだろう。



これは何やってんの?





「未来はいつも面白い」

これは太田さんが小説以外の場所でも、かねてから発信している言葉です。

童話「みつばちマーヤの冒険」で、嬉しそうにはしゃいでいる蝶々が出てきます。

マーヤが蝶々に「どうしてそんなに嬉しそうなの?」と聞くと、

蝶々は、「だってこの前まで芋虫だったんだよ!生きてることは楽しいんだ!みんなは僕のことばかにするけど、未来はとても面白いんだ!」

と言うのです。

蝶々なのだからそれ以上は変化しないのだけど、楽しい未来を信じている蝶々の姿。

太田さんはその蝶々の、

「未来はとても面白い」

という言葉を気に入り、子供にサインを書くときには合わせてその言葉を添えていたそうなのです。

するとある日、かつてサインを書いた子どもから、事務所宛に、

「爆笑問題の『未来はいつも面白い』って言葉最高でした!」

と手紙が届いているのを目にしたそうなのです。

太田さんが添えていたのは、

「未来はとても面白い」です。

でもその子は、

「未来はいつも面白い」と変化させていたのです。

文法的にはおかしいけど、ちぐはぐした「未来はいつも面白い」という言葉の響き。

そして自分が添えた言葉が変化して、

まさに今「未来はいつも面白い」ことが起きたのです。

それから太田さんはこの言葉は気に入り、様々な場所で発信しております。


毒舌漫才師太田光に憧れた少年が、初めて対面した太田さんの前で全身タイツに袖を通し、まるで正反対の芸を披露する。

それこそまさに、

「未来はいつも面白い」

そう思えた瞬間なのでした。