小さい頃の夢はピアニストになることでした。

ホールに詰めかけた超満員のお客さんが、スタンディングオベーションで僕の演奏に拍手喝采を浴びせる。

そんな自分を夢想しておりました。

でも、小学生のときクラスには僕よりピアノが上手な女の子がたくさんいて、

「クラスでもピアノの腕前が秀でてない自分がピアニストになんかなれるわけがない。」

と、悔しくも早々に諦めてしまいました。

それから僕はテレビに夢中になり、お笑い芸人になりたいと思うようになったのですが、

芸人になった今でもテレビをたくさん見ております。

そんな中、先週末は様々な方がテレビでピアノを演奏しておりました。

金曜日は19時から「TEPPEN」で芸能人ピアノ頂上決戦を鑑賞しておりました。

そこでは優勝した山口めろんさんをはじめ、様々なジャンルの方のピアノの腕前に魅了されました。

TEPPENが終わり、22時からの「ダウンタウンなう」では、X JAPANのYOSHIKIさんが『Forever Love』をピアノで演奏しておりました。

あの暴力的なドラムパフォーマンスの裏の、どこにこんな優しい音色を持ち合わせてるんだと、惑わせつつも感動させられる演奏に酔いしれました。

YOSHIKIさんの余韻に浸りながら眠りにつき、朝起きると、

土曜日10時から「題名のない音楽会」では、
辻井伸行さんがラヴェル、リスト、ご自身作曲の曲を演奏しておりました。

その圧巻のパフォーマンスを目の当たりにし、やはり今、日本でこの人の右に出るピアニストはいないのだと再認識させられたのでありました。

僕は連日に渡る様々な方のピアノ演奏を聴いて物思いにふけました。

もし子どもの頃、ピアニストになる夢を諦めていなければどうなっていたのだろう。

もしクラスメイトの演奏を聞いても、「もっと練習して自分が1番になるんだ」と強く誓ってていたら。

幼き自分が初めて挫折を味わったセピア色の日々を思い出しながら、僕はリモコンを手にしてチャンネルを回しました。




「ピエール瀧のしょんないTV」




そこでは、かつてピアニストを夢見た少年が、全身タイツに袖を通し、犬のお面を逆さまにかぶり、己の魂を震わせながらピアニカを演奏しておりました。





どこまでも届くように。





夢敗れた幼き自分に届くように。




そして僕は気づいたのです。

小さい頃、思い描いてた自分になれなくても、

夢のかけらを拾い続けていれば、

未来はずっと繋がっていて、

自分にしか作れない未来が待っているのです。





決して夢敗れたわけではなかったのです。