芸人をやっているとよく「ライバルは誰ですか?」と聞かれる。

ライバルなどいないのでその度に困ってしまうのだが、僕はその度に漠然と考えることがある。

日本一の「竜太郎」になってやろうということである。

引退はされたがお笑い界には上岡龍太郎さんという重鎮がおり、90年代内閣総理大臣としては橋本龍太郎さんが君臨していた。他にもプロ野球オリックスにかつて「竜太郎」という登録名の選手がいたりして、各界に活躍する竜太郎がいる。

さすがに総理大臣にはなれなくても、日本一笑いをとる竜太郎になろう。というのが僕の人生のちょっとしたテーマだった。

しかし事件は起きた。

元兵庫県議会議員・野々村竜太郎さんの登場である。

野々村さんの号泣会見を見て僕は唖然とした。たった一回の会見で日本中を大爆笑の渦に巻き込んだのである。

若手芸人は、年に1度のコンテストのために3分足らずのネタを丸1年かけて作ったりするのだが、たった1度の会見でR-1ぐらんぷり優勝をも勝る笑いとインパクトを残したのだ。

号泣会見をR-1ぐらんぷりの舞台で開いていたら、優勝賞金で政務活動費を返金できていたことだろう。

そしてR-1の「R」は竜太郎の頭文字Rだと未来永劫語り継がれていたに違いない。

さらに出廷ドタキャンというフリを大きく効かせてからのスキンヘッドでの再登場。

ハードルが上がりきった状態でどう越えていくかということまで考えておられるのだ。

自分の芸の未熟さを改めて痛感した出来事だった。

犯罪はいけない。

しかし、僕も早く野々村竜太郎さんみたいに日本中を笑顔にできる竜太郎になりたい。