劇団芋屋 負け犬の権利
本日夜の公演 千秋楽を見てきました。
高校の演劇部時代に同期だった一人がでるっていうんで観にいった。
いつもはコメディタッチの芝居らしい。
が
今回は違った。
今回はそれこそ本物のシリアス劇。
久しぶりにシリアスな芝居見たな~。
始まりは暗闇に背中を刺された男が入ってくる。
そこは廃墟。
およそ誰もいないであろうと思われるそこで男はしばし休むl。
そこに一人の男が入ってきて見ず知らずの関係ではあるが傷の手当てをしてやる。
暗闇の緊迫した空間から始まったこの舞台であるがはじまってすぐに客席は全て廃墟の一部になった。客席は全てその廃墟の世界観に取り込まれていた。
あとから賭博をやめられない男やずっとその廃墟に住み、女に飢えておかしくなりつつある男、傷を負った男を追ってきたヤクザ二人組、地元の人、廃墟を写真に撮りにきた男女などが入ってくる。
人間の根底にある世の中からの逃げとか性欲とか堕落とか自由とか殺しとかそんな汚くて普通に暮らしてたら目にすることはないであろう世界を描き出していた。
背中を刺された男はヤクザに脅され、途中で足を電ノコで切断される。
その瞬間一人の客が席を立って退場した。
おそらく気分が悪くなったのだろう。
ずっと張り詰めた緊張感、どこから誰が入ってくるかわからない廃墟の空間は見ているほうも肩の力が抜けない。合間合間にちょっとした普通の会話や笑いの場所があり、息抜きができたが結局ヤクザが入ってくると一瞬で空気が張り詰める。
男の足が切断される。
電ノコの音は生々しく客の想像力の材料には十分すぎた。
男は口をタオルで抑えられ、痛みを堪えるが激しく暴れまわる。
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ストーリー構成としては全体として長すぎた感はあったが空間の創りこみ、世界観は完璧だった。
そして私が一番引きつけられたのはなによりも役者一人一人の役作りの力だ。
それぞれの役者が本当にその役を生きていた。
演じていたというより生きていた。
確実に、生まれてからその瞬間までその人間であったかのような背景がにじみ出ていて、その場で考えて感じて演技をしていた。
客はそれぞれの役者たちから紡ぎだされる空気や感情の渦に巻き込まれていた。
今回はあまりにグロテスクないわゆるアングラ的な芝居だったので気分が悪くなったがこの劇団がまたコメディタッチで芝居を作るというならぜひ観にいきたい。コイツラの力があれば完璧な芝居ができる。そう私は確信した。
演出力、脚本力も抜群だし、この劇団は確実に階段を上っていくことだろう。
今後もこのクオリティを保ち、さらなる発展をしていくことを見守っていきたい。
私もいつかこの劇団にでてみたいなぁ。
稽古厳しそうだけど・・・