琵琶湖の水位低下中 ~話題沸騰の琵琶湖、この先どうなる

 

【産経新聞12月23日より】

 「琵琶湖の水止めたろか!?」といえば、琵琶湖が「関西の水がめ」であることを踏まえた滋賀県民の切り札的なギャグのフレーズだ。ただ今秋以降、琵琶湖は少雨による水位低下で、通常は水面下にある城跡が露出するなどしている。強い冬型の気圧配置の影響で県北部では雪が降り、水位の回復が期待されているが、関係機関が注視を続けている。

 

■過去には取水制限

 琵琶湖は言わずと知れた日本最大の淡水湖。面積は滋賀県の6分の1に相当する約670平方キロメートルで、貯水量は275億トン。瀬田川から南へ流れて宇治川、淀川となり、滋賀県だけでなく大阪、京都、兵庫の流域住民約1450万人の生活を支えている。

 ただ、今年は夏以降に降雨が少なかった影響で、秋に入り水位が大幅に低下。例年の平均を30センチほど下回っており、今月11日には平成17年以来18年ぶりとなるマイナス70センチ以下を記録した。

 水位の低下は過去にも問題となった。全国的に大渇水となった平成6年9月にはマイナス123センチを記録。学校のプールが使えなくなるなどの影響があった。12年9月もマイナス97センチ、14年10~11月にはマイナス99センチを記録し、いずれの年も取水制限が行われている。

 

■坂本城の石垣現る

 現時点では水位低下による農業や漁業への目立った影響はないというが、通常は水面下に沈んでいるものが続々と姿を現している。戦国武将・明智光秀が築城し、その後廃城となった坂本城(大津市)では11月中旬ごろから、本丸のものとみられる石垣が2年ぶりに姿をあらわした。

 

■モンサンミシェルか?長浜の「奥の州」

 普段は長浜市湖北町の沖合約200メートルに浮かぶ「奥の洲」は陸続きとなり、「フランスの世界遺産『モンサンミシェル』のようだ」などと話題になり、県内外から多くの人が訪れている。

 ただ、奥の洲とその周辺の湖岸はヨシの群生地で、県は保護地区に指定している。県琵琶湖保全再生課は「周辺の植物を踏み荒らしたりせず、常識ある行動をとってほしい」と呼び掛けている。

 

■翔んで埼玉で「琵琶湖の水を止める!」

 上映中の映画「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」の重要な場面での主人公のせりふ「琵琶湖の水を止める!」が話題を集めたこともあり、琵琶湖の水位は全国的に注目を集めている。実際、琵琶湖の水は過去に止められたことがある。

 

■瀬田川~改めて琵琶湖の水について知ってもらう機会になれば

 琵琶湖には大小合わせて約460本の川が流れ込むが、流出先は河川では瀬田川のみ。湖岸や流域は古くから洪水被害に悩まされてきた。明治29年9月の大洪水では大津市や滋賀県彦根市などの中心市街地が浸水。浸水日数は237日にもおよび、死傷者は100人を超えた。

 現在、水位の調整弁となっているのは昭和36年に完成した瀬田川洗堰(大津市)で、管理する国土交通省近畿地方整備局琵琶湖河川事務所が放水量を調整。琵琶湖の水位低下抑制も含め、淀川水系全体でのきめ細かなコントロールを行っている。滋賀県に「水を止める」権限があるわけではないのだ。

 一方、下流で洪水の危険性がある場合は同事務所が規則に基づき放流を止める「全閉」を行う。同事務所によると、瀬田川洗堰の完成以降、全閉は6回実施。近年では台風21号の影響で豪雨となった平成29年10月、1時間38分間止められた。琵琶湖の水位は11センチ上昇したが、基準水位は季節により調整されているため、あふれることはなかったという。

 琵琶湖の水を「止める」のはつまり、下流に住む人のため。県広域河川政策室は「流域で暮らす人に改めて琵琶湖の水について知ってもらう機会になれば」と話した。