室内生活

 新型コロナウィルスの影響で、大多数の方が室内生活を余儀なくされています。室内で、読書されている方も多いのではないでしょうか。

 ふと、あるサイトを目にしたため、今日は、「現代文」について書いてみます。(このブログは様々な単語検索でもヒットしており、現代文についてもかなり有益な情報が提供できるのではないかと思います。)

 

(1)川戸先生

 大学受験現代文を担当される川戸昌先生。

 関西では有名どころで、1993年前後は絶大な人気を誇っておられたようですが、70歳を過ぎ、今年ようやく退任されるそうです。

 川戸先生について、まとめられたサイトがありました。

  https://osaka.wicurio.com/index.php?%E5%B7%9D%E6%88%B8%E6%98%8C

 「授業」の部分は、まさに書かれている通りです。このサイトを見て感じたことは、何十年も、毎年同じことを同じように繰り返されてきたのだなということです。ご本人も、「現代文は私の商売道具だから、テクニックは一度に言わずに小出しにしていく。」とも言われていました。ワンサイクルの商売道具?として完成されていたのでしょう。また、サイト中に、「同じ本を二度買ってしまうことが稀にあるらしく、そのダブった本を生徒にプレゼントする」ということが書かれていますが、このシチュエーションも同じで、私の時にも「抽選で1名にプレゼント」されていました。この点までも毎年の同じ演出の1つだったのでしょうか。ただ、「おはよう」のことを「おはようさん!」と言われていた記憶はありません。おはようさん?

 

 

 さて、シュウキからも上記サイトについて何点か補足しておきたいと思います。

①まず、

「 (ⅰ)『先生の授業では解き方を何一つ教えてもらえなかった。』

 (ⅱ)基本的に授業は、“問題の本文を要約 →「読めたら解ける」として→解答の配布”という流れで進む。

 (ⅲ)解答に至るまでの解説が少ない。          」

という点について。

 これもある意味その通りで、(ⅰ)については、ご自身でも「そのようなことを言う奴がいるが、そんなことを言っていてはできるようにならないぞ!」と言われていました。川戸先生自身は、必要なことはキッチリ教えていると認識されているのですが、受講生が求めていることと乖離があるようです。

 解法解説も(ⅱ)と(ⅲ)に書かれている通りで、「問題文を要約し、要約したものを板書」されることが、講義全体の8~9割。そして、その後、本文が「読めた」のだから、問題は「解ける」はずとして、「解答(答えのみ)が配布」されます。

 受講生の側は、要約した後、「記述式問題の解答の書き方」つまり「問題文のどの文章をもとにすればよいのか。本文中に無い文言や説明は、どこからどう考え補足説明として付け加えるのか。」という部分を1つ1つ解説してほしいのに、「読めたら解ける」として解答文が配布されて終了となります。この点については、長年平行線となっていることが見受けられますが、どう考えればよいでしょうか。

 まず、講義回数が通年でも[1時間/週×30回]程度であり、1から10まで解説できない時間的な制約があります。また、毎年同じことを言われているようですが、上記のサイト内にも書かれているように、川戸氏は「私の授業と並行して『現代文解釈の基礎』(中央図書出版社)を読むとよい。」と言われています。このことは私の時も言われていました(また、「続編に『現代文解釈の方法』(中央図書出版社)があるが、これは読まなくてよい。」とも言われていました(追加))。これは、カナリ重要なことではないでしょうか。つまり、氏の読み方や解き方は、同書をベースにされており、その解説は同書に委ねられているということです。(ただ、受講生の要望としては、時間も無い(1科目に費やすことのできる時間は所詮限られている)中、せっかく講義も受けているので、その手間を省けるよう何とかしてもらいたいという思いもあると思われます。)

(※『現代文解釈の方法』については、後日読破しましたが、そこで気づいたことを記しておきます。この本は、問題形式ごとの対応方法が説明されています。「第2部」「8内容説明」の中に、野球の練習が例にされている箇所があり、川戸氏は最終のまとめの授業の際に、同じようなことを言われていました。また、本文の内容を解説したあと、即回答に移るスタイルも同じように思います。)

名著(出版社倒産のため10年間絶版していましたが、2021年秋にちくま学芸文庫として復刊されました。)

(サイトでも書かれていますが、本書と同じ体系を採る類書に『理解しやすい現代文』(文英堂)があります。ただし内容的分量は5/8程度。)

 

②次に、

 「師のテキストは、色鉛筆を何色も使い、丸を付けたり、線を引いたりされており、授業で示されているように単純に読んで単純に書くというだけではないと考えられる。」

という点について。

 私も、講師控室でテキストを拝見させていただいたことがあります。ここに書かれているように、ピンク・青・緑・黄色などの色鉛筆を何色も使い、丸を付けたり、行を跨いで線を引かれていました。その際、「こうやって、よく出てくる単語ごとに色分けして〇を付けてみる、とか、同義語・同義文や対義語・対義文などに印しを付けてみる、などして、文の構成を考えて、筆者の主張を読みとっていくんだな。」と言われていました。コピーさせてもらえないか尋ねると「これは個人的な分析だから」と断られました。

 つまり、色鉛筆で塗りたくられた手持ちのテキストで、川戸先生は、よく出てくる単語(キーワード)、同義による言い換え説明、対義による説明等に印しをされることで、本文を構造を立体的に捉え、漏れなく充分に「要約」し、「読む」ことをされていました。そして、それをまとめたものを板書に書かれる。(←サイトにある「単純に読んで単純に書くだけではない」ことの中身。主に問題文の構成・構造や主旨の把握。)

 現代文の得点を上げていくために、最も重要なことは、「十分に要旨を捉えて要約する訓練」を積むことです。現代文ができない人の大半は、「何となく読み、何となく解き、何となく解説を読み、終わり」というサイクルを繰り返しているので、いくら問題数を解いても、読解方法が身につかないので、できるようになりません。他方、他の暗記系の教科は、何となく方式でも、何回も触れているうちに、知識が定着し点数が高まってくる点で、科目特性の差があると思われます。

 

 

③川戸先生が述べられている現代文のポイントをまとめておきます。

・「読んでも解けない」→「読めたら解ける」へ

  要約:文章の大要を取りまとめて短く表現すること。

  要旨:文章で言おうとしている肝要なこと。 をつかむ。

・要約・要旨をまとめる場合、具体例を手短に一般化する。

・字数オーバーになる場合は、優先順位の低い要素をカットする。

・一文は50字前後、長くとも80字程度が望ましい。

・スムーズに各文がつながるように書く。

・キーワード(繰り返されている語句)を材料に、文章の転換点を把握したり、骨格をまとめる。

・筆者の判断文・主張・意見(~である。~と考える。等)を抽出する。

・時間軸や場面の変化、並立や対比の構成があれば捉える。

・評論では、抽象概念語を有するものを優先する。

・随筆では、象徴的、隠喩的な示し方にも注意する。

・指示語、接続語、キーワード等を目安に、文章の構成(二段構成、三段構成(序論・本論・結論)、四段構成(起承転結)、帰納法・演繹法、具体と抽象、対比・比較、等)をつかむ。

・答案の書き方について。本文中からそのまま抜き出す(単語、語句、文、文章)。本文をもとに自分で作成する(必要な名詞などを補い、適切な結びにする。内容を簡潔にまとめる)。

・フィーリングでいきなりこれだと決めつけず、可能性のある候補を挙げ、文脈に根拠を求める。

・普通の説明問題の記述について。説明問題のポイントは「言い換え探し」。機械的な抜粋や合成だけではまとまらない場合がある(難問)。説明とは情報量の拡大。やさしい言葉に置き換える。要求に即す形でまとめる。

・理由説明問題について。簡単な設問なら、どこかに「~から。」などと理由がズバリ書いてある。そのようなズバリの記述がなければ、理屈をたてて推論するしかない(難問)

・「自分自身の言葉で」説明が求められる場合。本当にその言葉の意味がわかっているのかを問われている。一旦、本文に即した抜粋型の解答を書いて、そのポイントになる用語を自前の表現に置き換えればよい(難問)

・内容探求型。一般教養も必要とする問題。筆者の言いたいことはすべて本文中に書かれているのが原則だが、「いうまでもないこと」「言いたいけれど本筋と外れるので書かれていないこと」「読者の教養でわかってもらえればよいこと」等について、明示されていないことがあり、その部分の掘り起こしを求める問題。一般教養を動員し、本文を発展的に読みとく必要がある(難問)

 

④まとめ

 川戸氏は、語句の意味を調べ、キーワード・キーセンテンス、接続語などにより順接・言い換え(具体⇔抽象)・対比等の構造を把握し、筆者の主張を理解し、それを要約する。その理解に基づいて、本文中の表現に極力忠実に、しかし機械的処理では対処できない難問・超難問においては、本文中の表現の抜粋・接合だけでなく、思考力全体を駆使して解答を作成することを示されていると思います。

 

(なお、川戸氏は終盤の講義で、“現代文とはどのような科目か”ということについて、ご自身の考えを、A4×4ページのプリントで説明されています。近日、ここで触れたいと思います。)

 

 

 

 

 

その他)

・花園大学通信より

 https://www.hanazono.ac.jp/pdf/education/literature/nihonbun07.pdf