「予科練平和記念館」に行ってきました。


「行きたい」ではなく、「行かなければならない」と思っていた場所です。




零戦は知っている…




プロペラ機です…

皇紀2600年に製造されたことからゼロ戦闘機…

零戦です




この機体は、最高速度500kmを超えて飛ぶことができました。パイロットにかかるGは凄いでしょう…失神する人も多いと聞く負荷を耐えるためには訓練と技術の習得が欠かせません。







ここは、旧海軍がパイロットを養成するために昭和5年に開設した「予科練習生」の訓練所です。

今も、この施設の隣りには陸上自衛隊の武器訓練所や武器庫があります。


他にも筑波、百里…と、茨城県には沢山の訓練所がありました。筑波の関連施設は、映画「永遠のゼロ」のロケ地にもなりました。



茨城県は「戦争」の記憶が多く残る場所でもあります。そして、この阿見町、土浦市、つくば市、百里は訓練所で過酷な日々を過ごした若者たちを支えた街でもあります。







海軍の制服には7つのボタンがあります。

これは世界の「7つの海」を象徴していて、この施設はそれにちなみ、7つのテーマで部屋が区切られています。


入隊は14歳半から…

中学生です…






無邪気な笑顔

まだ幼さが残る…子供と言ってもいい年頃の男子達…一様にとても痩せています。



まず、そんな彼らの姿が胸をうちました。



自ら志願し、或いは選抜されてここに集まった彼らは勉強でも秀でた若く、才能あふれる子達です。


座学で学び、体力をつけるために早朝から4キロの走り込みをし、6時の起床から9時の消灯まで毎日毎日、規律の元に節制しています。

到底、育ち盛りの胃袋を満たせる食べ物もなく、それでもこんな笑顔がある…

その現実が…胸にせまり、こんな子供達の親はどんな気持ちだったのか、とさらに思うと、歩みが止まりました。



零戦イコール特攻、と思い浮かべると思いますが、特攻は終戦に近づくころに最も多く、とはいえ、物資の不足で飛び立つことなく終戦を迎えた訓練生も多かったそうです。



それでも、開設の昭和5年から終戦までの15年あまりの間に24万人が入隊し、うち2万4千人が飛行訓練過程を経て戦地へ赴きました。特別攻撃隊(特攻)として出撃した人も多く、戦死者は8割の1万九千人です…。



原爆投下の2ヶ月前には、この訓練所も空襲のターゲットになり、焼け野原になりました。



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テーマにそって歩く中、「手紙」の展示があります。自由に手にとってページをめくることができるのですが…


家族や友人にあてた手紙の文面には、中学生とは到底思えない、大人びた言葉選びが感じられ、皆、思いやりに溢れている内容でした。


そして、その手紙の最後には


「左様奈良」と。



「左様奈良」…「さようなら」




初めて目にした言葉でした。



調べてみたら、こんなことがわかりました。










世界一美しい別れの言葉




でも、美しいけれど、世界一、切ない言葉だと思います…



10代のまだあどけなさの残るこの若者たちが、「覚悟」をもってしたためた手紙、別れたくはないけれど、行かねばならないとの想い、そんな彼らの命の重さが、辛くて辛くて。



空襲や特攻の実際の映像や体験者の話をフィルムで見ることができる部屋がありましたが、とてもではないけれど、入るには辛すぎて…無理でした。



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映画「永遠のゼロ」






岡田准一さん演じるパイロットが最後に浮かべるこの表情…









「今とは違う明日を、未来の平和を信じて戦うしかない」



この言葉の意味と重さを、痛感しました。



そして、「彼らに相応しい今を生きているのか」と問いかけます、自分自身に…






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忘れてはならないのは、命をかけて使命を全うしようとした彼らと共に、また、同じように亡くなったかけがえのない命があるということ。相手もいるということ。



「戦争」には、正義は無いと思いました。



ただただ、抜け出すことのできない大きな渦の中で、もがきながら失われた命の、その莫大な喪失感があるだけでした。



そして、やっぱり、思うのです。


彼らに相応しい今であるのか、と。

何度も何度も…





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「永遠のゼロ」のラストシーンです。


三浦春馬さん演じる、言ってみれば今風の若者の前を、岡田准一さん演じる零戦に乗った兵士が通り過ぎます…敬礼をして…



「未来の平和」を信じて…




この施設の出口にはこの文章がありました。


撮影は不可なので写します。







20世紀からの課題


20世紀は戦争や紛争によって1億人以上の人々の命が奪われました

たった100年間に日本の人口と同じくらいの数の命が失われたのです

今、私たちが生きている世界はこうした多くの犠牲の上にあるのです


国のために命を捧げた純粋な若者たちの気持ちを忘れないで下さい


今この瞬間にも苦しんでいる人々が世界にいることを忘れないで下さい




私たちは生き抜かなければならない


戦争のない平和な世界と命の尊さを考えながら





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施設の隣には公園があります。


子供達の賑やかな笑い声…

犬と戯れる人々…

ベンチで一休みする大人…



そしてオリーブの木


オリーブの花言葉は「平和」です。






見上げると今日も夏空


こんな暑い、夏の日に


今日と同じようなこの空に、未来への希望を託して飛んで行った沢山の人々の姿を見るようです。




生き抜かなければならない…


そして、彼らを決して忘れてはならない…



胸がギュッと熱くなり、重い塊が今も残ります…




2024.9.16  阿見町 予科練平和記念館にて。