抗がん剤は初回だけ入院。

退院してからは、通院で行った。


投与室のような部屋で、ゆっくり投与を行い、少し様子を見てもらい、帰宅する。


「慣れ」ってすごい。

投与後はあんなに気持ちが悪くなる抗がん剤。

何度か経験すると慣れていくのだ。

私の場合は投与したその日から3日間踏ん張れば、後は平気。

次の投与が来るまでは何も心配はなかった。


周りで抗がん剤投与をしている方々は、かつらを被ってる方や、何も被っていない方、帽子のみ被っている方もいて、人それぞれだった。


投与している間、雑誌や本を見て過ごしていたのだが、「医療用かつら」をよく目にしていた。


私もどんどん脱毛していくのかな…

想像して不安になるよりはと看護師さんに聞いてみた。


「何回か投与していくうちに、抜けていくと思うよ。どんなスピードなのかは薬にも個人差にもよるし、まだわからないけれどね。でも抜けたままの人は見たことないよーニコニコ」と言ってくれた。


おー、抜けてもみんな生えてきているのかぁ、それは安心だな〜。とは思うけれど、やっぱり抜けるまでもとても不安だった。


投与する日に必ず会う女性がいたので、話を聞いてみた。


急にごっそり抜けるのかな?それとも徐々に抜けるのかな?全体的にはげていくの?

抗がん剤で正常な細胞まで破壊されると、生えてこなくなることはないのかなと不安になるよ。


色んな話をしたら、その女性は帽子を取って見せてくれた。


何故か耳の周辺だけはしっかり残っていたのだけど、前髪と後ろ髪はない。

抜け方もイメージとは全然違っていた。


抜け方が中途半端だし、帽子をかぶれば耳のところは生えてるからまだまだパッと見ても脱毛してるとはわからないかなーと思って帽子しか被っていないんだよ、カツラは1つ持ってるけどまだ被っていないよニコニコとお話ししてくれた。


私は元々、帽子やカチューシャ、ターバン、とにかく被り物が大好きでたくさん持っていた。

髪が抜けても持っているもので補えるし、大丈夫じゃないかなぁと思っていた。


色んな話を聞いて、実際見せてもらってイメージしていたのだが、実際抜け始めると想像とはまた違った。


抜け始めると、とにかくスピードが早かった。

最初はニット帽で過ごしていたが、とにかく脱毛している事自体が嫌で嫌でたまらなかった。


私は元々毛量がすごい。

自分の髪の毛がこんなにもボリュームがあることを実感したのは、脱毛を経験してから。


抜けてしまうと今まで被っていた帽子が嘘のようにブカブカ。頭の大きさは去ることながら、毛量も凄かった…。


どれもこれもサイズが合わなくなった。

髪の毛が抜けると、顔の印象も全然違う。

更にはまつげや眉毛もごっそり抜けていった。


全く別人みたいな顔。

目ってこんなに細いのねと。。

ビックリした。

自分の顔をまじまじと見たのは初めてじゃないかな?と思うほど。


元々、鏡をあまり見る方じゃなかった。


もう脱毛にも限界が近い。

とにかく一刻も早くかつらを買わねばと思った。


「つむじ」ありとなしでは金額も全然違う。

「医療用かつら」と言われているものはかなりの値段だ。


もし買っても、似合うかはわからない。。


2年前にエクステをしていたことを思い出し、部分ウィッグなら安いかもしれないとインターネットで探し始めた。

でも「部分」だけじゃだめだ。 

全く補えない。


ロング

ミディアム

ショート

と別タグで出てきた。

様々な髪型のウィッグ、色も形も違う。


被ったことがないのでとても抵抗があったが、そんなことを言ってる場合ではない。。

見ているとどんどん楽しくなった。


普段できない髪型ができるのってとてもいいのかもしれない。

これを気に買ってみることにした。


初めてのロングウィッグが届いた。

つむじがないので、帽子をかぶらないとカツラだとすぐにバレてしまうショボーン
でも…
長いからか、重みがあってあまり違和感がない。


毎日ロングもいいけど、ものすごく暑いのでショートも買ってみた。
これもつむじがない。
違和感があったので、美容師の友人にお願いして顔に合わせてウイッグをカットしてもらった。
びっくりするほどに馴染んだ。

他にも何点も持っていたが、1番のお気に入りはボブ。
つむじもあって、帽子をかぶらなくても違和感があまりなかった。

友達と会うときはこのボブのかつらが大活躍した。
自分のことが嫌で嫌でたまらなかったから写真なんて絶対に1枚も残っていないと思っていたけれど。。

自分が撮っていなくても、友人が少しだけ残してくれてた。。
13年以上も前のプリクラと、送ってもらった写真。
もっと撮っておけばよかったなと今ではとても後悔してる。

若い…。

家では、ハンカチ一枚で作れるような手作りのバンダナで過ごしていたが、外に出るときはウイッグは手放せなくなった。


気がついたらあんなに不安だった脱毛も、抜けてしまえばどうしようもない。仕方がない。

ここまで来ると、楽しむしかない。


人生で脱毛する経験なんて相当な理由がないと、きっと一度もないかもしれない。 


髪が生えてきたら絶対にこの髪型にしよう、

こんな髪型も似合うのかぁ。。

といろんなウィッグを買って楽しむことができた。


脱毛してないと経験できなかったことでもある。


病院に出向くときは必ずかわいいね〜!どこで買ってるの?とよく話をかけられるようになり、友達や顔見知りもできてとても心強く、嬉しかった。