初めての抗ガン剤投与

1日だけ入院して様子を見ながら行うことになった病院


不安じゃないと言えば嘘になる。

これからどのくらい治療が続くのかもわからない。


誰も頼れない。

自分の体のことだ。

「1人で頑張らねければならないんだ」と、肩にとても力が入っていた。


ひとしきり「抗がん剤投与」の流れの説明を受けた。


テレビでしか見たことのない抗ガン剤の治療。

私は勝手に抗がん剤を「飲み薬」だと思っていたが、まさかの点滴投与だった。


いろんな質問をした。

今から抗がん剤投与をするなんて思いもしないくらい…穏やかな時間がゆっくり過ぎていく。


「抗がん剤の液を漏らしてしまうと、打撲のような感じで皮膚が青くなるから、出来るだけ針を指すのは一回で終わらせてあげたいなぁ真顔針を指したときに痛かったらすぐに言ってね。漏れてる可能性が高いから違和感があったらすぐに教えてね。」と看護師さんは真剣な眼差しで言うのだ。


一瞬とても緊張した。


でも漏れてしまった事は一度もなかった。

常に一発勝負である。

こんな緊張感の中、完璧に作業をこなす看護師さんたちは本当にすごいなと毎回思っていた。


4人部屋の病室に案内された。

年齢層も幅広く、一番若いのは私。

お母さんの世代、おばあちゃんの世代とみんなバラバラだった。


「もし気持ちが悪くなったら我慢しないで直ぐにナースコールを押してね〜ニコニコ直に来るからダッシュせっかく病院にいるから我慢はしない方がいいからね。」

とお話してくれた。


看護師さんはみんなとても優しくて

「何か不安なことや聞いておきたいことはある?」

「わからないことがあったら教えてね。」

と声をかけてくれた。


「私、ズンタローさんくらいの年齢の頃って何してたかなぁ。何考えていたんだろうなぁ。これからは良いことだらけだはずよ〜ニコニコ」 と明るく気さくに声をかけてくれた方も居た。


何気ない会話なのに、ものすごく気分が晴れるニコニコ


看護師さんたちは本当にみんな凄いなぁと思う。

たくさんの患者さんがいるのに、笑顔で一人一人に声をかけているのだ。

今まで全く知らなかった世界。

乳ガンにならなければ全く縁のなかった世界が目の前にあった。


看護師さんたちの一言一言が、不安定な私の心を穏やかにしてくれて、顔を見るだけで安心感を得られる不思議笑い泣き


抗がん剤から子宮を守るために、ベールを貼るような役割のお薬を注射して2週間。


主治医が「若いから転移のスピードが早い。だから2週間も待てない。」

との言葉に反論するかのように自ら転移のリスクを承知の上で、2週間も抗がん剤の予定を延ばした。


「やっぱり抗がん剤投与をやめたい!!って言いたいなぁ。。」と日に日に気持ちは後ろ向きになっていったのも事実。


その気持ちと相反して、赤ちゃんのお部屋となる子宮を私はもしかしたらこの2週間で更に転移のリスクを高めてしまったのかもしれない。

ここまでこだわり抜いた治療。

赤ちゃんに会うためにはとにかく生きるしかない。

抗がん剤をやらない選択肢がもう残っていない。

それもちゃんと理解していた。


何が正解なのかもわからない。

これでよかったのかもわからない。

誰も答えてくれない。


色んな思いで頭が大混乱していた。


私が生きないと赤ちゃんは戻ってこない。


その気持ちと、看護師さんの言葉だけで何とか1回目の抗がん剤投与を終えた。


抗がん剤を投与して1時間が過ぎた。

思いの外、何ともない。


なーんだ、こんなもんか。

これならいけるな。

余裕じゃないかニコニコ


直ぐに嘔吐や頭痛等の副作用が出ると思っていた私は…完全に安心しきっていた。


暫くすると何だか車酔いや船酔いをしているような感じになる。


徐々に気持ちが悪くなっていった。

でも全然、これくらいなら我慢ができる。


ナースコールを押すまでには至らず、定期的に看護師さんが様子を見に来てくれたニコニコ


しかし…


夜になるに連れてどんどんと吐き気や気持ち悪さが増していき、遂には経験したことのない激しい二日酔いと似た症状が出てきた。

もう、どうしようもない。


「この状態はいつまで続くのかな…」

渡しつの質問に看護師さんは「日が経つに連れてまた元に戻っていくから、大丈夫だよ。」

他にもたくさんの言葉をかけてくれた。


居ても立っても居られない。

時計ばかりを見て、やっと朝を迎えた。


看護師さんの巡回がものすごく心強い。

主治医も顔を見に来てくれた。


「我慢しないで直ぐにナースコール押してよ〜。様子を見るために入院してるから、遠慮はしないで。」と看護師さんと同じような言葉もかけてくれたえーん

ものすごく心強かった。


翌日も車酔いや軽い二日酔いみたいな気持ちの悪さは続いていたが、たくさん支えられて心はホクホク温かかった。


これからお世話になる病院を後にした。