1995年1月17日、阪神大震災の朝・・・恩師が亡くなられました。

大学時代、私がアナウンサーになるきっかけを与えてくださった故・泉田行夫先生。

泉田先生はNHKの草分け的アナウンサーで、現役引退後、大阪芸術大学の教授として

帝塚山大学にも、「日本語」を教えに来られていました。試験は朗読。本

私の拙い読みを褒めてくださった先生に、調子よく気を良くした私が「喋る仕事がしたいのです・・。」と

何気なく言った言葉を真剣に受け止めてくださり、「生田教室」(アナウンサーを目指す大学生が通う教室)を

紹介してくださいました。

泉田先生は、日本の朗読の第一人者。いま考えると、無知な自分の申し出に顔から火が出る思いですあせる

その時、泉田先生がおっしゃった言葉を今でも鮮明に覚えています。


「僕の教え子で、大阪でアナウンス教室をやっている生田君という元NHKのアナウンサーがいる。

とても厳しい人だから、君を引き受けてくれるかどうかわからないが行ってみるかい?

例え、君を引き受けてくれたとしてもアナウンサー試験は何百人に一人の難関。

その先は、古沢君。あなたの努力次第ですぞ。」と・・・。


それは・・とても心に響く、ゆったりした声でした。


泉田先生は阪神大震災の朝、旅立つ前の病床で「ご気分は?」と問いかけたご子息に

「爽快です・・。」と応えられ、そのお顔には、一筋の涙が光っていたそうです。


救出と復興の中、教会で営まれた葬儀。なぜか教会の前の電線には沢山の鳩がとまっていました。

すると出棺の際、誰からともなく歌いだした「いつまでも絶えることなく~友達でいよう・・。」の曲に

合わせるかのように、電線にとまっていた鳩が一斉に飛び立ったのです。

何とも不思議な光景でした。


次の日、この葬儀の記事が「鳩のお見送り」として関西の各紙に掲載されました。


きっと天国でも、震災で亡くなられた6400人余りの方たちを朗読で慰めていらっしゃることでしょう・・・。



「生田教室」http://www.geocities.jp/ikutakyousitu/