アドラー心理学ELM勇気づけトレーナー 本橋悦子です。



自転車に乗っていて交通事故に遭ってしまった息子の治療とリハビリのことを少しずつ書いています。

当時の私たちと同じ境遇にいる方々へ、ほんの少しでも希望の光が見えますように…




前回は、事故当日の私のことを書いてみました。

救急車で一緒に病院に行って、私は救命救急室の待合室でひとり、夫が来るのを待ちました。


あの日は土曜日。

午後から夫は出かけていました。

私は、救急車の中から出先の夫に連絡を入れました。

すぐに病院に駆けつけてくれると思ったのになかなか夫は来なくて…


夫が来るのを待合室で待っている間、警察官が二人、相手の保険会社の方が一人、私のところにきました。

保険会社の人は名刺を置いていった程度だったかと思います。

警察官は、息子の今の状態を聞きつつ、息子が身につけていたものをすべて証拠として持ち帰っていいかと許可を取りにきました。

病院関係者からすでに手渡されている息子の衣服や靴など身につけていたものがビニール袋に入れられていました。


やっと夫が病院にきました。

近場にいたはずなのに、2時間くらい経ったのかな…


何をしていたかというと…


まず、遊びに出かけていた娘がもし家の鍵を持っていなかったことを考えて、一度家に戻り家の鍵を開けて、もし誰かが(といっても泥棒なんですけど…)家に侵入しようとしたときまるで人が居るかのように、玄関に靴を並べ、リビングのテレビをつけっぱなしにしてきたそうです。


そして、自転車で病院に駆けつけようとしたとき、実況見分をしているところを通って、


「もしかしたらここが事故現場なんじゃないか?!」(そのとおりそこが事故現場でした)


と思って、事実はきちんと事実として記録に残しておこうと思ってスマホでいろんな角度からありとあらゆる痕跡を写真で撮っていたそうです。


なぜこのような行動を夫がとったかというと、以前夫がバイクに乗っていた時に後ろから追突されて、その時の加害者が嘘ばっかり言っていたのが腹が立ったから、被害者側もきちんと証拠を揃えておくことも大事だと思ったから、だそう。


人って、究極の場面だとより一層その人の『性格』みたいなものが出るんだなぁ…


なんとなく毎日生活している中でそれぞれの役割がなんとなくあってなんとなくその役割をこなしているような気がするけど、これを機によりはっきりと私たち二人の役割分担がされたような気がします。

もちろん向き不向きなんかも考慮の上で…(笑)


夫は対外的なものを全部引き受けてくれました。

警察対応、保険関係、保険会社とのやりとり、加害者との連絡、いずれ裁判になるだろうから、どこの弁護士事務所がいいのかも時間をかけて探してくれました。


そして、事故現場は中学校の正門前だったので、防犯カメラがありました。

夫はその中学校の校長先生に電話をして、学校に取り付けてある防犯カメラを見せて欲しいとお願いもしてくれました。結果としては、一個人には見せることはできなということで断られてしまいましたが、校長先生もとても親身になって対応してくださったそうです。


夫が息子のためにできることを仕事よりも優先してしてくれていました。

とても助かりました。

だから私は息子の治療とリハビリに専念出来たのだと思います。



夫が病院について、先生から話がありました。

まずは、脳内の出血が止まるように処置をしていること。

出血が止まらないと、最悪の状況になること。

それはもちろん息子が死ぬということです。

幸い、脳内の出血以外は無傷であること。

どこも骨折もしていないし、内蔵も全く外傷を受けていない。

だから脳内の治療に集中できた。ということでした。


何度かCTを撮って脳内の様子を観察していきます。

こちらの祈り通り、脳内の出血は止まりました。

しかし、すぐに脳が浮腫みはじめて、脳圧が上がってきました。

このまま脳圧が上がって脳を圧迫すると脳細胞が死滅して、最悪は「死」です。


脳圧を下げるために、低体温療法をすることにしました。

息子の体を冷たく冷やしていきます。

そのために強い麻酔薬を投与していきます。

おでこのちょっと上あたりに小さな穴を開けて、脳圧センサーを脳にさしました。

人工呼吸器をつけました。

息子の手首のあたりと足にはいくつもの薬を投与するための針が刺されています。

今でもそのあとは残っています。


低体温療法を始めましたが、なかなか思うように下がらず…

この療法もずっと続けていくわけにもいかないからと主治医はこれからどんな治療があるのかをいろいろ説明してくれましたが、その時の私は全く理解することができませんでした。

ただただ脳圧が下がってくれることを祈っていました。




次回は、意識のない息子に私たちがしたことを書きたいと思います。