*これは個人の妄想によるおとぎ話です。実在する国家・団体・出来事とは一切関係ありません。


一部センシティブな内容を含みます。特に男性差別を受けたことがある方など、フラッシュバックを引き起こす恐れがありますので閲覧にご注意ください。


昔々、ある島国では、男性は外で働いてお金を稼ぎ、女性は家で家事や育児をするという、人類的にはかなり普遍性のある、性別による役割分担で社会を営んでいました。

ある時、この役割分担を「女に家事や育児を押し付ける役割分担は不当だ!」「家の外で活躍できないのは女性差別だ!」と叫ぶ活動家が現れました。この活動家はきっと、「男に重労働を押し付けていること」などを、男性差別だとは考えなかったのでしょう。

女性も「家の外」に引きずり出し賃金労働をさせた方が、労働者を安く働かせることができることに着目したその島国の権力者は、女性も「男の賃金労働社会」で働けるようにしました。そのシステムは…男女教導△社会?女性キラキラなんとか?…まあそういう名前がついていたかもしれません。

しかし、活動家とその薫陶を受けた「意識高い系」は実は女性の中では少数で、男性と同じレベルでガチで働く女性は全然増えませんでした。相も変わらず、「男性は外で働いてお金を稼ぎ、女性は家で家事や育児をする」という、活動家の言うところの「旧時代の家父長制」に基づく観念を捨てきれない、「意識低い系の女性」が多数だったのです。



女性の賃金労働社会へのガチな参入が進まない中でも、いわゆる「理工系」分野は特に女性の参入が進まない分野でした。

旧時代の「男は働いて金を稼がなければならない」という規範を「男女平等」社会になっても問答無用でやるしかない男性と違って、「やりたいことをやればいい、それで食い扶持を稼げなくてもいい」という特権が、女性だけに認められる「男女平等」社会において、勉強もハード、仕事もハード、同性に羨ましがられるキラキラ要素も皆無、そんな「理工系」の分野を敢えて選ぶ「気骨のある女性」は「希少種」だったのです。

そこで権力者は考えました。気骨のある女性を増やすのは時間がかかり大変だから、気骨のない女性でも理工系に進めるシステムを作ろう!

こうして「女子枠」が創設されました。

まずは理工系の入り口になる大学入試で「女子枠」を作りました。難しい数学は勉強しなくていい、1年に1回しかない一発勝負の学力試験を受けるのは「繊細な心」には耐えられないだろうから免除してあげる。女性に優しい「女子枠」で、女子学生は大学の理工系の学部・学科に入りやすくなりました。
この「女子枠」で割を食ったのが男性と女子枠を使わない「気骨のある女性」です。一般試験の定員を減らされて合格する為の難易度が上がった上、難しい勉強を回避して入った「女子枠」学生と「同じ大学・学部の学生」として同じ扱いを受ける、という屈辱も味わうことになったのです。

次に就職する段階、企業の採用で「女子枠」を作りました。ある企業では、応募する理工系学部出身者の男女比が9:1くらいなのに、採用目標は男女比7:3という目標が立てられました。これを実現するのに、

応募者
男性:45人、女性:5人
採用者
男性:7人、女性:3人

ということをやるようになりました。素晴らしい「男女平等」企業です!!男性の応募者は、大学入試での「男性差別」に加えて、就職活動でも「過酷な男性差別」を受けることになりますが、「男女平等」を推進する活動家は差別される男性に、こう言って励ましていました。

男のくせに泣くな!

その島国の「男女平等」の考え方では、社会に不満を表明するのは、女性のみに認められた特権とされていたそうです。それは客観的に考えて「平等」ではない気がしますが、弱い女性が特権を持つのは「公平」であり、「平等」に反しないそうです。無学の自分には、言っていることの意味がさっぱり分かりませんが、「男女平等に目覚めし者」には理解できるそうです。

そういう採用で女性比率を高めた企業は、都会にある本社や研究所と、都会から離れた「地方」に工場を持っていました。
採用した従業員をそれぞれの職場に配属するのですが、「地方勤務は嫌」「工場勤務は嫌」という女性従業員が多く困り果てました。その島国では「女性の機嫌を損ねること」は法律に基づかず「ハラスメント」と認定され処罰(リンチ)されていたので、「ハラスメント」にならない男性従業員を地方の工場に送り込みました。こうして、都会の綺麗なオフィスに優先的に配属される「女子枠」ができました。

せめて地方で生活に困らないようにと、地方に赴く男性従業員に給与の加算手当を出していたところ、

加算手当は誰でも貰えるといいながら、貰っているのは男性従業員だけだ。これは女性に対する差別だ!

と糾弾されてしまいました。
大変な仕事をする従業員に出していた加算手当です。その大変な仕事を引き受けるのが男性しかいなかったから、受給者が男性しかいなかっただけなのに。
こうして「都会のキラキラしたオフィスで働く従業員」と「地方で泥臭い仕事をする従業員」が、同じ会社の同じ資格で雇われているという理由で、同じ給料で仕事をすることになりました。男性を犠牲にしている気がしますが、素晴らしい「男女平等」ですね!

オスの待遇なんてそれで十分!

と、「男女平等」を推進する活動家は言ったとか言わなかったとか。

更に数年が経ちました。
地方工場で頑張った男性従業員たちは成長し、周りもそれを認める立派な社会人になりました。そこである男性従業員は、上長にこう申し出ました。

自分はそろそろ都会の職場で仕事をしてみたい。また、能力的にも経験的にも昇進させてもらう資格を満たしている。

これに対して、上長はこう答えました。

都会の職場で昇進するのは、女性が先であると「男女平等」に決まっている。残念ながら君は都会の職場に異動することもできないし、昇進も今は無理だ。

「男女平等」の社会では、昇進にも「女子枠」が作られていたのです!ここで、長年差別に耐え、不遇な扱いを甘受してきた、男性従業員たちの我慢の限界を超えました。

女性よりハードルの高い大学入試を課され、女性より倍率の高い採用試験を乗り越え、女性がやりたがらないハードな仕事をこなしたのに、昇進や待遇は女性に劣後する。それがその島国での「男女平等」だったのです。

なめんなボケ!

と思った男性のうち、野心ある者は「能力に見合った給料と待遇を用意してくれる」外国に渡り、そうでない者は一生懸命に社会や組織の為に働くのをやめてしまいました。そう、「男女平等」なのだから、男性も女性と同じレベルで働けば良いのです!!



この企業に限らず、多くの産業で男性が「男女平等」に生きるようになったその島国では、劇的な変化が起きました。

これまでそのほとんどを男性が担っていた、きつい、汚い、危険な労働、深夜労働などから、「男女平等」を旗頭に男性が退場し、それまでのレベルでの社会インフラの維持が困難になりました。
病院の診察時間外になる夜や土日に急病や怪我をしたら、次の診察時間がくるまで「死んだら負け」の社会、停電したら復旧は1ヶ月待ちが当たり前の社会、大雨で橋が流されたら永久に通行止めになる道路など、発展途上国では当たり前の光景が現出したのです。

そしてこの男性による「男女平等」の実践によって、女性の側にも変化がおきました。それまで社会が、男性に意識的・無意識的に押し付けていた「割に合わない大変な労働」を男性だけにやらせることができなくなりました。「女性だから」と免除していると労働力が足りないので、「男女平等」に「割に合わない大変な労働」を担うことになりました。
また、男性と女性が同じ水準の労働負荷で働くようになった為、その島国で長年問題とされてきた「男女の賃金格差」も解消されました。
更に、社会福祉の水準が下がり、男女ともに同じ労働負荷がかかるようになった結果、それまで差別的に男性より長かった女性の寿命が、男性と同じ水準になり、平均寿命の「男女平等」も実現しました。



こうして、「女子枠」を作ることで、男性があえてやってこなかった「男女平等」を実行するようになり、その結果、その島国では「真の男女平等社会」を実現したということです。

めでたしめでたし。