*あくまでも個人の考えです。


しばらく前に話題になった、「東大志望には東大卒の先生”論争が話題 教える資格とは?」に関して、議論されている方向とは異なりますが、何故、地方の中高一貫の進学実績が微妙なのか、以前から考えていた話を書いてみようと思います。

ここでいう「地方の中高一貫」は、寮併設で他地域から広く優秀な生徒を集めている学校は含みません。あくまでも地元民ベースの中高一貫校のお話です。



ちなみに上記の記事にある「東大出てないのに俺に教える資格あるんですか?俺、東大志望者ですよ」という生徒には、「人に教えてもらう必要がある程度の学習能力(地頭)しかないのに何言ってんの?」と言ってあげれば良いと思います。




日能研などの偏差値を見ていれば分かりますが、首都圏・近畿圏以外の私立中学校とて勉強しないで簡単に入学できるわけではありません。「中学受験」の名に見合う勉強量は必要だし、それに伴って中学入学段階でも相応の学力を有していると考えられます。

そして、地方の中高一貫校のカリキュラムを見聞きする限りでは、中学の内容を前倒しで教えるものの、やたらに早足というわけでもなく、むしろ「ついてこれない生徒」を残していかないようにフォローしている学校も多いような気がします。それでも地方の公立中高ルートと違って、時間的なアドバンテージは充分にあります。

また、田舎の学校あるあるで「通える範囲に他に行く学校がないから」来ている生徒がいるので、中学入試段階で全国レベルで見て中位~上位層も決して少ないわけではないはずなのです。

しかし、高校卒業後の大学進学実績は「微妙」で、特に東大や京大の合格実績はぱっとしなかったりします。




地方には金がない

東大や京大の合格実績が微妙な、大きな理由の1つに「地方の家庭には金がない」があると思います。首都圏にせよ近畿圏にせよ、独り暮らしをするには学費以外のお金がかかります。地方の低い金銭所得では、これを捻出するのは結構大変です。

東大・京大に行くくらいなら、自宅から地元の大学の医学部に行ってくれ、というのは親の切実な要望だったりします。都会で一人暮らしをすることを考えたら、通学用に車を買ってやる方がはるかに安くつくし、大学卒業後も地元に残ってくれる可能性は高くなります。そして、そちらの方が生涯年収も高くなります(苦笑)。

ついでに書いておくと、首都圏や近畿圏の私立大学に進学する生徒は、地方ではもれなく「穀潰し」の称号を授与されます。親戚や近所の人から「親に高い金を出させて私大卒?」と普通に罵られます。地方においては、私立大学とはそれくらいステータスが低いのです。都会で大学生をやりたかったら最低でも国立大学に合格する必要があります。




地方には人材がない

お金以外の要因として、「指導する教員の微妙な学歴」があると考えます。

ほとんどの地域の「地元国立大学」には、教員養成の為の教育学部が設置されています。そして、地方の中学高校の教員の出身大学は、地元大学かせいぜい2県隣までの大学の教育学部である場合が多いです。

これに対し、首都圏・近畿圏の中高一貫校だと、東大や京大を卒業後、母校の教員として戻ってくる卒業生がいるし、また非卒業生でも、東大・京大出身の教員を雇用するのもそんなに難しくありません。こういった東大卒・京大卒の教員・講師の存在が、これらの大学への進学実績に貢献している要素があると自分は考えます。


こう書くと誤解されそうですが、上記のyahoo記事にあるような、「卒業大学による教員・講師の教える能力の優劣」を言いたいわけではありません。本質はそこではなく、教員自身の「東大や京大に向けて受験勉強をした経験の有無」が、受験指導に影響を与えるという意味です。


以前にも書きましたが、「できる生徒」は2種類います。


1⃣周りの環境に影響されない人

能力に恵まれ強い意志で自学できる、合格実績のない僻地の学校からでも合格できる生徒とか、自分で目標を見つけたら、自分で考えて実行して目標達成できる生徒。


2⃣進学校にいたら伸びる人

教員が焚き付けてモチベーションを上げ、学習のノウハウを提供し、周りの生徒と切磋琢磨することで伸びる生徒


「東大合格高校盛衰記」を読んで考えたこと


1⃣は大抵の場合、勉強に対するコストが異常に低い(飲み込みが速い、要領が良い)のでほっとけばいいのですが、2⃣には「適切な受験指導」が必要になります。本稿では、この2⃣の生徒を、東大ないし京大に合格させることを考えます。


まず第一に、東大も京大も入試問題自体の難易度が高いです。その難しい問題を「試験時間内に合格に必要な点数を取れる」ようにする為に、どういう勉強をすればうまくいく可能性が高いか、その感覚や相場観を教員が持っていて、生徒を指導できるというのは大きなアドバンテージだといえます。

不躾を承知で書くと、特に数理系の科目は、高校の教員が自分の担当科目を解いても「試験時間内に合格できる答案を書く」は簡単ではありません。大学受験までにどうやったらできるようになるのか、経験ベースで伝えられることは多いと思います。


二つ目に、東大・京大とも「受験科目が多い」ので、どのようなリソース配分が良いのか、教員の自分の指導科目だけでなく「受験勉強全体」を考えたリソース配分を指導する必要があります。これは自分がやったことがないと難しい面があると思います。「何をやらせたらいいかわからない」というのが一般的な教員の本音ではないかと思います。

いや、地方の進学校でも東大や京大に合格する生徒がいるではないか、と反論されそうですが、そういう生徒は上記のタイプ1️⃣か、要領の悪さを尋常でない努力で補えるタイプ2️⃣で、教員の受験指導の成果ではないと言えます。たまに自分たちの指導の成果だと勘違いしてる痛い教員もいますが(苦笑)。


以上のような理由から、地方の教員の学歴・学習歴(自身の大学受験経験)が生徒の進学実績に影響を与え、地方の中高一貫校の進学実績の伸び悩みの要因の一つになっていると考えます。




まとめ

•教員自身が高校の時にできたこと以上の「受験指導」をするのは難しい。

•地方の進学校では東大や京大に進学して地元に戻ってくる人間が少ないので、難易度の高い大学に向けた受験指導ができる人材が不足している。

•結果として都市圏の進学校なら東大・京大に合格できる2⃣の生徒が伸び悩む。