(1)劇的だった。
9回裏1アウト1塁。最後のバッターがフルスイング。行った!と思ったらファーストライナー。飛び出していたランナーは帰塁できずダブルプレーでゲームセット。
台湾が世界一になった瞬間だった。
11/24に行われたプレミア12の決勝戦。
レギュレーションシステムにより今大会3回目の台湾戦である。今までの2回は日本の勝利。それどころか国際大会27連勝中である。
日本が負けるわけがない。そう思っていた私は大河ドラマが終わってから見た。その時は0-4で負けていたが、まあ、そのうち逆転するだろうみたいな気持ち。
しかし相手ピッチャーを攻略できない。
その内に台湾にチャンスが来る。日本ピッチャーの隙をついて大ブルスチール。内野安打と思われるプレーで1点追加!と思われた瞬間、チャレンジで会うと判定となる。
その後は一進一退であったが、9回裏。先頭打者がヒットで出塁。次のバッターは内野ゴロだがダブルプレーは取れず、1アウト1塁の場面。そして最後の瞬間を迎えた。
(2)プロはシーズンを優先するから
日本では野球は人気スポーツ。スター選手も沢山いる。しかしこうした国際大会ではそういう選手が辞退する事も多い。アメリカのメジャーリーグでも同じ。大事なのはシーズン中の自チームでの活躍であり、一過性の国際大会はお祭りのようなもの。こうした大会でケガでもして、シーズンで活躍できなければ元も子もない。
だからオリンピックでもアマチュアメンバーで臨んでいたが、2000年のシドニーオリンピックからプロアマ混成チームになる。そして2004年アテネでは各チームから2名ずつ招集という形を取る。しかし選手の中には後ろ向きで、いつだったか中日は一人も出さないという事もあった。
それはシーズンを優先するからということであり、非難される事では無い。プロとしては当然であろう。
しかし、見ている側からすると、何か白けてしまう。
今回も故障を理由に召集を辞退した選手が何人もいたという。
しかし、集まった選手だけでも日本は勝つだろう。
そんな思いは誰もが持っていたと思う。
(3)謝謝台湾
そして思ったのは2013年のWBCでの日本VS台湾。
2011年に起こった東日本大震災。台湾は世界一の寄付金を送ってくれた。一番に救援に駆けつけてもくれた。国際事情で政治的には表立って感謝は出来ないが、民間レベルで感謝の意を伝えようとして、「謝謝台湾」のプラカードを持って観戦に訪れた人が沢山いた。
そして試合は大激戦。現監督の井端氏のヒットで9回同点に追いつき、犠牲フライで逆転。辛くも日本が勝利した試合だ。
試合終了後、台湾の選手がマウンドに集まり、観客席に向かって頭を下げた。印象的なシーンを覚えている人も多いと思う。
今回の台湾の優勝、コメントに否定的な意見は全く見られない。韓国が日本に勝利した時にマウンドに国旗を立てるという侮辱的、かつ失礼な態度を取ったのと正反対だ。
試合が終わった時、台湾の選手はそれなりに喜んではいたが、大騒ぎする事もなかった。そして記事の内容。
勝ったんだからシャンパンファイトくらいは良いと思う。しかし台湾は相手チームを気遣い、帰国してから祝勝会だという。
日本人は民度が高いと言われることが当たり前になっているのか、若干の思い上がりというか慣れっこになってしまっている甘えみたいなものがあるように思う時がある。
しかし今回の台湾チームの振る舞いは、自分たちの思い上がりを知らしめることになってほしいとも思う。
やはり間違った方向に行っている時に正しい道を示してくれる人を本当の友人というのだろう。