飲み過ぎは肝臓に悪いといわれる日本酒だが、
実は肝機能障害を抑制する効果についての研究が進んでいる。
酒好きには“福音”だが、酒を飲めば肝臓が健康になるというわけではない、と研究者はクギを刺す。
大関(兵庫県西宮市)は、
日本酒の醸造過程で生成されるブドウ糖とアルコールが結合した糖成分「α-エチルグルコシド(α-EG)」が、
飲酒によって引き起こされた肝機能障害を抑制する効果があるかどうかを昨年から研究。
「良好な成果が得られている」(広常正人・総合研究所所長)ことから、研究成果を9月に学会発表する。
同社は昨年5月、α-EGが薬剤によって起こされた肝機能障害に有効なことをマウス実験で証明済み。
今回の研究で、アルコール摂取による肝機能障害に効果が認められれば、
α-EGを高配合したサプリメント(栄養補助食品)などの商品化に取り組む方針だ。
α-EGは美肌効果の分野で研究が進んでおり、
大関はカネボウ化粧品、長谷川香料と共同で、
日本酒の濃縮液を塗布するとα-EGの働きで、
皮膚の角質層からの水分蒸散量が減少してしっとりした美肌になることを確認している。
2月には、細胞間脂質量やセラミド含有量の増加などによる保湿効果について論文発表した。
飲酒による皮膚表面温度の上昇が美肌によい効果があることも判明。
大関は、カネボウ化粧品と協力し、
α-EGの美肌効果を生かした新しい化粧品とサプリメントを商品化する考えだ。
広常所長は「肌にも、体にも優しい日本酒ができれば」
低迷する日本酒の需要拡大効果にも期待している。
α-EGは米のでんぷんの糖化と酵母による発酵が同時に行われる
日本酒独特の醸造工程で生成される成分で、蒸留酒には含まれない。
ほろ苦さのある甘みで日本酒に風味や濃厚さを加えるが特徴だ。
大関はα-EGを通常の純米酒と比べて3倍(同社比)多く含む
「純米冷酒 生貯蔵(辛口)」を2月に商品化した。
アルコール健康医学協会は「日本酒には善玉コレステロール増加など健康にいい面がたくさんあるが、
(α-EGの)効果が証明されれば中立的な立場で紹介したい」(古屋賢隆常務理事)と注目している。