健康的な食生活を広め、心臓病やがん、糖尿病といった生活習慣病と無縁の社会をつくろうと、
フィンランドが健康食品産業の育成に力を入れている。
昨年は政府が1500万ユーロ(約23億円)を投資して体にいい食材のさらなる研究開発に乗り出した。
ビジネスとしては同国の市場だけでは小さく、国外に独自の健康食品を広めることにも意欲的だ。
フィンランドは英国とともに地理的にあまり食材に恵まれていないとの印象があった。
その中で糖分や脂肪分の多い現代的な食生活に運動不足が重なって心臓病や糖尿病が社会問題となり、
その改善に挑んできた。
「上手に食べて体を動かし、爽快(そうかい)にすごそう」をキャッチフレーズに
食生活の改善で着目しているのが大麦やライ麦、オート麦というフィンランド伝統の食材と、
最近、食材として見直されている松樹皮や、マツ科の常緑樹である唐檜などだ。
繊維質に加え、抗酸化作用や体脂肪減少、
がん抑制が期待されるフラボノイドやリグナンを豊富に含み、
体にいい腸内菌や酵素、ホルモンの生成にも役立つ健康食品の開発を政府と企業、大学が連携して進めている。
すでに、胚芽(はいが)を含むライ麦のクラッカー、豆類食品、果糖や、コケモモの果樹、
虫歯予防で知られる天然甘味料のキシリトール、有機栽培の奨励では成果を上げ、
2月28日、ロンドンの駐英フィンランド大使公邸での説明会で紹介された。
ライ麦のクラッカーは15世紀にさかのぼる北欧伝統の食材で、
「フィン・クリスプ」の名で知られる。
ライ麦パンを高温で固くなるまで焼く。
繊維質は17%と多い。
クラッカーに魚のペーストや、チーズ、果樹を乗せたスナックや、スープやサラダに最適という。
「繊維質の1日の摂取必要量は25~35グラムだが、
欧州の摂取量はベルギーとポルトガルを除いて世界平均以下。
ローカロリーで繊維質を効果的に摂取でき、しかも血糖値を下げ、
心機能の向上やがんの抑制に効果がある。ダイエットにも最適だ」
「フィン・クリスプ」を製造、販売するフィンランドの食品会社、
「Vaasan&Vaasan」の海外輸出担当、マグナス・ヨハンソン氏は説明会で効果をこう強調した。
最近は中国への輸出も好調だという。
一方、豆類を専門に扱う「フィン・ソイ」の創設者、
モシェ・メイダン氏は「コンビニ時代になって家庭で料理をする時間が短くなった」と指摘し、
低脂肪、低カロリー、高繊維質、低糖分の食材を使った家庭料理のレシピの変革を訴えた。
果糖は血糖値の上昇をブドウ糖の19%に抑えるとして糖尿病患者に効果が期待される。
ジャムのほかに「Fruisana」のブランドで砂糖に代わる食材として英国にも広がっている。
コケモモは寒冷地の北欧に多く野生し、
フィンランドでは風邪薬の代わりにも使われてきたビタミン豊富の伝統食材だ。
ドライフルーツやジュース、肉料理の付け合わせに利用されている。
こうした健康食品産業を支えるのが、
約300の関連企業で組織する政府投資機関の「フィン・フード」だ。
健康食品の情報を紹介し、
フィンランドでは国民の70%以上が健康食品に関心を持つようになったという。
それに伴い健康食品産業も業績を上げてきた。
ただ、フィン・フードは「市場拡大へ海外企業と提携を図りたい」と、
今年から英語のサイトも立ち上げ、祖国の健康食品の利点を世界に広めようと力を入れている。