第85回米アカデミー賞で、在イラン米大使館占拠人質事件(79年)を題材にしたベン・アフレック監督の映画「アルゴ」が作品賞など3冠に輝いたことについて、イランメディアが一斉に反発している。
CIA(米中央情報局)関係者が映画製作クルーを装ってイランに入国し、事件に巻き込まれた米外交官を救出するストーリー。イランメディアは、事件に関与したイラン人学生や市民が暴力的に描かれる一方、米外交官やCIAが英雄的に描かれ、「まったく事実に反する」と批判している。
半国営メフル通信は25日、オバマ米大統領の妻ミシェルさんが受賞式に参加したことに触れ、「芸術的な評価ではなく、政治的な賞だ」と指摘。イラン学生通信は、「賞の長い歴史と名誉に傷をつけた」と非難した。また、イラン国営放送は「西側諸国での反イラン感情をあおり、軍事衝突の下地を作るものだ」と述べた。
それでは 在イラン米大使館占拠人質事件とは?
中東の産油国イランは長い間、アメリカと関係が悪いことで知られています。しかし、かつては全く逆で、アメリカと親密な国だったのです。その関係が一転したのが、1979年11月の在イラン・アメリカ大使館占拠人質事件です。昨年秋、この事件を題材にしたアメリカ映画「アルゴ」が日本でも公開され、話題になりました。
79年2月のイスラム革命では、イスラム教を重んじる人たちが、宗教を軸にした国づくりを目指し、パーレビ国王を追い出しました。「国王はアメリカの言いなりで、市民生活を考えず、ぜいたくばかりしている」と考えていたからです。アメリカは逃亡した国王を受け入れたため、革命に参加した若者らが怒り出し、大使館に乱入したのです。アメリカ人外交官ら52人を人質にとり、444日間も大使館を占拠しました。
国際的な決まりでは、大使館の敷地内は外国の領土と同じで、勝手に入ることは絶対に許されません。事件は世界中から非難を浴び、アメリカとイランの関係は完全に断絶してしまいました。
テヘランに住む評論家のアッバス・アブディさん(56)は当時22歳で、事件に参加しました。外国と距離を置き、自由で民主的な国づくりを目指していたと言います。しかし、革命後のイラン政府は、国王に代わり宗教指導者たちが絶大な権力を握りました。地方の発展や貧困の解消は進みましたが、民主化や経済発展は理想通りにはいきませんでした。
アブディさんは「事件は後悔していないが、こんな非民主的な国になるとは思っていなかった」と振り返ります。