【 24 】

 

 

 

 

-----男の供述-----

 

 

寒かった

 

 

 

とにかく寒かったです

 

 

 

日が沈み出し、「そろそろ家に戻ろうか」って妻に言ったまさにその時・・・・・

  

犬の鳴き声が聞こえてきました

  

波の音と混ざり合い、最初は途切れ途切れでした

 

 

「どこから聞こえてくるんだろうね・・・・・」 

 

そう妻と話している内に・・・・・

  

すぐ眼下の岩場からだ、と分かりました

 

 

  

私と妻は上の堤防沿いに犬の鳴き声が聞こえる方向へ近づき、岩場を見下ろしました

 

鳴き声はより近く、けたたましく聞こえてきましたが、犬の姿は見えませんでした

 

 

   

私達は人がほとんど来ない、静かなこの海岸が好きで・・・・・たまに日本海を眺めつつこの辺を散歩します

   

珍しく私達以外の誰かが犬でも連れているのかな、なんて最初は二人で話していたが、一向に鳴き声は止みませんでした

  

音が発せられている場所も、ずっと同じ岩場の中からでした

   

 

 

まるで「悲鳴」にも似たその犬の鳴き声の響き・・・・・

 

 

  

我々はどうにも様子が変だと思い、堤防を回り一旦浜に下りてから岩場に入りました

 

 

 

日が沈みつつあったので、足場を確かめながら鳴き声の発信地へと接近していきました

 

「野良犬が迷い込んで出られなくなったのかな」

  

鳴き声の聞こえる方向へとさらに進むと、足場が急に険しくなりました

 

私は妻をその場で待機させ、一人で岩窟の奥へと進むことにしました

 

 

 

夕闇が氷のように冷たい岩を二層の色に染め分けて・・・・・・

  

手袋をしていても、指先の感覚が無くなる程寒かったです

  

私は途中で一度振り返り、妻に声を掛けました

 

「気を付けてね」

 

妻の返事を聞いてから、再び強風を避けるように岩場を下りていきました

 

その時はもう迷い込んだ犬を助けるだけだと思っていました

 

 

 

やがて波音が遠ざかり・・・・・ 


  

 

間近に鳴き声が聞こえるようになった頃、私はこの岩窟の入り口に辿り着いていました

  

そして・・・・・・沈みつつある夕陽が最後の光を岩の切れ目から届けてくれ・・・・・・

 

 

私の目に飛び込んできたのは・・・・・・・犬と・・・・・・・

 

 

  

 

ヒトでした。

  

  

 

  

・・・・・マダチイサナコドモ・・・・・・