このシリーズでは、「相手との関係性が深まると、何でも言える関係になる」といった思い込み(と思います)を発端として、若者や子どもたちの心の様子について、考えています。(詳細については、以前のブログをご覧ください)
そんな折、SNSで『褒められたくない若者たち』という記事を目にしました。
今の若者は、『褒められたくない、目立ちたくない、埋もれていたい』との考えです。
実際、大学生と関わる中で、こうした思い・感情を感じることがあります。
実際、授業後の振り返りシートの「当たり障りのないように生きてきた」という学生の思いについては、以前にお話した通りです。
そこで、①『当たり障りのないように生きる』具体的な姿について
②『教育の何が、子どもたち若者たちに、こうしたことを教えてきたか』について
そして、前回は「One for All All for One」という有名な言葉を基に、「みんなのためにガンバレ」と言われて、学校行事などで頑張った体験を多くの方はお持ちかと思いますが、「みんなで一人のために頑張ろう」という体験ってなかなかないのでは?という疑問について考えました。あるとしても、圧倒的に両者のバランスが崩れているように思えてなりません。
すなわち、③(一人を大切にする)個性と(集団を大切にする)強調性の兼ね合いについてです。
「配慮を要する子」のデータから、「ここ(適応教室)ならば、一人一人の個性を大切にするために、周囲が配慮して言葉がけをしたり、彼等の反応をゆったり待つことができるけれど、学校という多人数の集団の中では、苦しいだろうなぁ」と感じました。
それは、学校という、学級として同時に多くの子どもたちを相手にしている場所では、一人一人との個別対応とともに、集団としてのまとまりも必要になってくるからです。
では、どうすればよいのでしょうか。
『一人一人の個を育てる』(個性)とともに『学級全体という集団を育てる』(協調性)を育てるためには、どうすればよいのでしょうか。
そのことについて考える題材として、私が見聞きしたことや、実際に取り組んだことについて、具体的にお話していきます。
現在、私は週に2回小学校のスクールカウンセラーとして勤務していますが、他の小学校と同様に、「いじめ」「不登校」等の事案が見られます。
ここでは、その中の発達障害傾向がしばしばみられる男子児童について、お話していきます。
彼とは一昨年から関わっていますが、「自分の好きな話題になると、周囲のことが全く見えなくなって、一方的にしゃべり続ける」といった様子が顕著に表れて、彼の言動に辟易とした他の児童と、トラブルになることがしばしば見られました。
そこで、トラブルが起こる度に、「何があったの?」「何が嫌だったの?」「どうしてほしかった?」といった質問をきっかけとして、彼と話し合ってきました。
彼には彼の理由かあり、周囲が理解してくれずに、理不尽なことを要求してくると捉えているようですが、もちろん他の子たちには、彼等の理由があります。
そして、難しいことは双方が「自分の物差し」で判断していることです。
例えば、教室で彼の前の席の女の子の三つ編みが揺れました。
すると、彼の関心はその揺れている三つ編みに集中してしまっています。
もちろん、授業を聞いているどころではありません。
しかし、三つ編みをただ見ているだけでいてくれればよいのですが‥
その内、気持ちが高まってきて、とうとう三つ編みを引っ張ってしまいました。
もちろん、女の子はびっくりして、「先生、○○さんが‥」と言うわけです。
そうなると、担任の先生は「○○さん、どうしてそんなことをするの」と、彼を叱ることになります。
彼にしてみれば、深い意味はなく、「目の前の動いているものが面白かったので、触ってみた」ということなのですが、もともとコミュニケーションが得意ではなく、社会性もまだまだ育っていない彼ですから、上手に説明できないかもしれません。
すると、先生も他の子どもたちも、彼の子とを「授業中に勝手なことをやっている困った子」と、見なしてしまう場合もあることでしょう。
そんなことが重なり、私が出会ったころの彼は、トラブルがあるとスクールカウンセラーである私のところへ、学級の子どもたちへの不満を言いにちょくちょく来ていました、
ところが、昨年は私のところへ来ることがめっきり減りました。
職員室や相談室から見ると、運動場で元気に入りまわっている姿をよく見かけるようになりました。
なぜでしょうか。
担任の先生が、上手に彼を受けとめてくださったからと考えます。
では、どのように?
それについて、次回考えていきましょう。
次回も、ぜひご参加ください。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
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