小林製薬の紅麹原料入り機能性表示食品による健康被害の原因について、厚労省は5月28日に国立医薬品食品総合研究所と合同で開催した記者会見で、培養段階で青カビが混入し、プベルル酸などが生成されたことが推定されると発表しました(日経2024年5月28日NHK2024年5月28日)。また、大阪市は5月29日に開催された食中毒対策本部会議で、同社大阪工場にある紅麹製造室の培養室など6カ所から、プベルル酸を生成する青カビを検出したと公表しました(NHK2024年5月29日)。つまり、紅麹自体に問題があったわけではなく、生産過程で何らかの理由で青カビが発生し、そこからプベルル酸などが産生されて、サプリを使用した人の腎臓にダメージを与えたのではないかと考えられます。

 

5月29日に開催された厚生科学審議会食品衛生監視部会資料5は、これまでの経過がまとまっていてわかりやすいです。健康被害情報のあるロット(2023年6,7,8月製造分)から、プベルル酸とそれ以外の2種類(化合物Y、化合物Z)の計3種類の化合物が特定されました。化合物YとZはいずれも、モナコリンKと基本骨格が類似しており、紅麹菌がモナコリンKを産生する過程で青カビの介在により生成されると推定されました(青カビ単独ではYやZは産生されない)。さらに、プベルル酸単品およびプベルル酸および化合物Y、Zを含む製品をラットに投与した動物実験で、近位尿細管の変性・壊死などの所見が見られました(p5)。

 

ただし、これまでの学術情報のまとめによると「プベルル酸と同様にPenicillium属のかびから産生されるシトリニンでは腎毒性が、パツリンでは神経毒性や胃潰瘍が報告されているが、プベルル酸の毒性は明らかとなっていない」(JSM Mycotoxins2024年5月14日早期公開pdf)とのことです。

 

また、この件を受けて、食品衛生監視部会の下に「機能性表示食品等の健康被害情報への対応に関する小委員会」を設けることになりました(資料6)。