5月23日開催の経済財政諮問会議は子育て支援や社会保障がテーマ。その中で民間議員が、高齢者の定義の「5歳延長」を指摘したと報道されました(時事2024年5月23日)。資料を確認したら、確かに「高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべき」(資料1)という文言がありました。

 

筆者自身も高齢者に近づきつつあるせいか(?)、65歳になったら高齢者扱いするのはいかにも早すぎるように思います。日本老年学会・日本老年医学会の「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ」は2017年に、「主として心身の老化現象の出現のありよう」を根拠に、75歳以上を高齢者(old)、65~74歳を准高齢者(pre-old)と呼び、超高齢者(oldest-oldないしsuper-old)は平均寿命を超えた90歳以上にすることを提案しています(報告書pdf)。高齢者の定義は社会保障政策全般にかかわるため(わかりやすいのは年金の受給開始年齢)、実際に変更するのは議論(とそれに要する時間)が必要でしょうが、まじめに考えるべきだと思います。

 

もう一つ気になったのは、社会保障の強靭化に関連して、保険外併用療養費制度の対象範囲の拡大が提案されていたことです(資料4)。要は公的な混合診療の拡大で、朝日新聞は1面に載せていました(朝日2024年5月22日)。記事によれば、今年の骨太方針にも盛り込まれるとのことなので、既にその路線ができあがっているのでしょう。SaMDの二段階承認(くすり×リテラシー2022年12月23日2023年8月31日12月29日)もこの方針に沿っています。

 

保険外併用療養費は健康保険法第86条に規定されており、公的に定められた「評価療養」「患者申出療養」「選定療養」以外の混合診療は禁止です(最高裁平成23年10月25日)。だから保険外併用療養費の拡大を、ということなのですが、朝日の記事で例示されていた「がん遺伝子パネル検査」は、差額ベッド代のように患者が自分で選ぶ選定療養ではなく、評価療養として扱われるべき技術であり、評価療養は本来、保険収載を前提に評価の途上にある医療です。

 

ですが資料4には「民間保険の活用も含めた保険外併用療養費制度の対象範囲の拡大」とあるので、エビデンスがまだそれほどない先端的な医療を、保険適用をめざさずに患者自己負担で実用化することが想定されているようです。これに対して日本医師会は定例記者会見(日医定例記者会見2024年5月22日)で、経済状況で受けられる医療に差をつける混合診療の解禁は「日本の医療を根底から覆す」として問題視しています(m3.com2024年5月23日)。これは日医の見解が正しいです。