イランの50~79歳の人に対するポリピルの心血管疾患予防効果を検討したクラスターランダム化比較試験(PolyPars、NCT03459560)の結果が、3月14日にHeart誌に発表されました(Heart. 2024 Mar 14:heartjnl-2023-323614)。

 

南イランに住む50歳以上の住民を、居住する村でランダムに2群(ポリピル群と対照群)に分け、対照群の村の住民には健康的なライフスタイルに関する教育のみ、ポリピル群の村の住民には教育に加えて1日1錠のポリピル(エナラプリル(orバルサルタン)+ヒドロクロロチアジド+アトロバスタチン+アスピリン)を飲んでもらいました。中央値4.6年の追跡で、主要アウトカム(急性冠症候群(非致死的心筋梗塞+不安定狭心症)による入院、致死的心筋梗塞、致死的/非致死的脳卒中、突然死、心不全、の複合アウトカム)は、対照群176/2215(8.0%)、ポリピル群88/2200(4.0%)で、主要アウトカムが半減しました(HR 0.50、95%CI 0.38-0.65、絶対リスク減少4.0%ポイント、95%CI 2.5%-5.3%)。スタチンもアスピリンも安価な薬ですので、医療資源の乏しい国では特に有益かもしれません。

 

ポリピルの予防投与により心血管疾患を劇的に減らす(かもしれない)というアイデアは、今から20年以上前に提唱されました(BMJ 2003;326:1419.)。当時は「スタチン+3種類の降圧薬(利尿薬、βブロッカー、ACE阻害薬)+葉酸+アスピリン」の組み合わせにより心血管疾患が8割以上減らせると推定されていました。その後、レシピが色々工夫されて検証が相次ぎ、RCTのメタアナリシス(Cureus. 2023; 15(10): e47032.)でも有効性が認められています。ただし安全性のメタアナリシスは行われていませんでしたが。