英国の財団であるThe Health Foundation(もともとは民間医療保険会社からの多額の寄付で始まったらしい)は7月25日、英国の医療の将来を展望する報告書「Health in 2040」を公表しました(The Health Foundation2023年7月25日)。あくまで英国の話ですが、超高齢社会でどんな医療(や介護)が求められるのかという点で日本の参考になります。

 

報告書によると2040年時点でイングランドでは、910万人(成人の5人に1人)が何らかの病気を抱えつつ生活していると予測されています(2019年比で250万人増)。さらに、病気を抱えている期間も11.2年(2019年時点)から12.6年に延びます。平均余命は延びるけれど、その分、病とともに暮らす期間も長くなるというわけです。特に人数が多いのは慢性疼痛、糖尿病、うつ病など、いずれもプライマリ・ケアの領域であり、報告書はGPや地域サービスに投資する必要があると述べています。

 

高齢者が、何らかの病気を抱えていても、できるだけ健康で元気に過ごす秘訣は、ミュア・グレイ先生の『SOD 70!』(くすり×リテラシー2020年6月22日)に書いてあります。グレイ先生は現在は「Live Longer Better」という活動に取り組まれていて(いつの時代も先が見えているすごい先生です)、その目的は①活動を増やす、②健康寿命を延ばす、③医療・介護のお世話になる必要性を減らす、の3点です。

 

サイトを読んでいて興味深かったのは「私たちが既に持っている知識を実践すれば、人は“live longer better”できるという強固な科学的エビデンスがある。90歳代後半までに直面する深刻な問題のほとんどは、通常の生物学的な加齢プロセスによるものではなく、個人や社会レベルで修正が可能な3つのプロセス、すなわち体力の低下、病気、否定的で年齢差別的な考え方によるものである」というくだり。その逆をいけば高齢でも元気で明るく生きられるわけで、まさに『SOD 70!』です。