14日付の日経朝刊に掲載された、日本語で論理立てて記述・説明する能力(記事では“論理力”と呼ばれている)に関する野矢茂樹先生のインタビュー(日経2021年7月14日)は、筆者が日頃考えていることだったので、とても勇気づけられました。

 

野矢先生は、SNSなどで背景も前後関係も分からない短い単語が拡散する現状、共感(言い換えれば“空気”)だけで世の中が動いていく現状を「危うい」とはっきり述べています。そうではなく、自分が言いたいことがあるならそれを論理立てて言葉で表現しなければ、相手に伝わらないし、議論もできません。野矢先生が「論理力は国語力でありコミュニケーション能力」とおっしゃるのに深く同意します。

 

共感と論理の関係は、カーネマンの「システム1」と「システム2」(くすり×リテラシー2021年6月4日)になぞらえることができるかもしれません。「怖い」「かわいそう」「嫌だ」といった直観(システム1の)で判断するのが共感、メリットとデメリットを比較した上でじっくり(システム2で)判断するのが論理です。行動経済学の知見が普及し、健康・医療においても“ナッジ”が流行りですが、ナッジに対する「もやもや」感(くすり×リテラシー2021年4月21日)は、論理でギリギリ対象に迫ることがしんどいけれど大事だということを軽視している(ように感じる)からかもしれません。健康や医療に関しても、情報を論理的、批判的に吟味する能力は、ヘルスリテラシーの重要な一部です。

 

2022年度から高校の国語に「論理国語」と「文学国語」という2つの選択科目が登場します。「論理国語」は「〈実社会〉を生きるために必要な言語能力の育成、とりわけ「論理的、批判的に考える力」や「創造的に考える力」を養うことに重きを置いている点が特徴」(河合塾)だそうで、まさに高校生や大学生のうちに学ぶべき素養です。教科書ができたら読んでみたいと思います。大人も学んだほうがよいかも(野矢先生の『大人のための国語ゼミ』、図書館で予約しました)。