10日ほど前になりますが、楽天メディカルジャパンは9月25日に、同社が開発していた光免疫療法薬アキャルックス(一般名セツキシマブ サロタロカンナトリウム)の製造販売承認を得たと発表しました(楽天メディカルジャパン2020年9月25日日経2020年9月25日)。適応は「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」で、早ければ年内にも(薬価がついて)使用可能になる見通し(日経2020年9月29日)です。

 

 リリースの説明によると、アキャルックスの作用機序は、EGFR(上皮成長因子受容体)抗体でがんの分子標的薬として使われているセツキシマブに、光に反応する色素を結合させたもので、波長690nmのレーザー光を照射する(レーザー照射装置も同時に承認された)と色素が反応して、がん細胞の細胞膜を傷害するということです。

 

 リリースには臨床試験成績として、国内フェーズⅠ試験(3人):うち2人が部分奏効(PR)、海外フェーズⅡa試験(30人):うち4人(13.3%)が完全奏効(CR)、9人(30%)が部分奏効と書かれていますが、添付文書や審査報告書が本日時点でPMDAのサイトに公開されていないため詳細は不明です。本来、国が承認した薬の情報は直ちに公開するのが筋だと思いますが、必ずしも徹底されていません。公開されたら改めて確認したいと思います。

 

 重要なのはこの薬が、3年前に課長通知という地味(?)なレベルで定められ(厚労省2017年10月20日)、2019年に成立した改正薬機法で法的根拠(関連通知(厚労省2020年8月31日)によれば該当する条文は「法第14条第5項、第23条の2の5第5項」)を得た「条件付き早期承認制度」(厚労省2020年8月31日)で承認された薬ということです。条件付き早期承認制度のポイントは、フェーズⅢ試験(=検証的臨床試験)を行わずに申請、承認ができるという点で、発売後に有効性・安全性を検証することになります。

 

 同制度のQ&A(厚労省事務連絡2020年1月19日)の「問11 抗がん剤について本制度適用を求める際、全生存期間(OS)の結果を示さずに代替エンドポイントで承認される可能性があるか」に対しては「疾患の特殊性等に鑑み個別に判断」と回答されています。アキュラックスはまさに代替エンドポイント(奏効率)で承認されたことになります。

 

(2020年10月18日追記)

 添付文書(2020年10月8日)ならびに審査報告書が公開されていました。安全性に関して、海外試験の30例中、Grade3以上の有害事象19例、死亡に至った有害事象3例でした(審査報告書p26)。