おなかの手術をした人が、術後に帯状疱疹を発症し、退院後も痛くてつらいと聞き、帯状疱疹後神経痛を疑って文献検索をしてみました。

 

 まず、医学中央雑誌の「シソーラスブラウザ」にアクセスし、「帯状疱疹後神経痛」と入力すると「神経痛ー帯状疱疹後」が出てきました。そのままクリックすると、MeSH用語の「Neuralgia, Postherpetic」が出てきたので、すぐ右の「PubMedを検索」をクリックすると、あっという間に文献検索ができました。医中誌のこの機能は、「帯状疱疹後神経痛」を英語で何というのか知らなくても検索できるのでとても便利です(教えてくださった佐藤さん、ありがとうございます!)。

 

 1079件がヒットしましたが、さすがに多すぎるので、フィルター(絞り込み)機能を使って、利用可能性を「Free Full-Text」、論文のタイプを「Review」または「Systematic Review」、出版年を「5年以内」にしたら22件に絞られました。現在のPubMedは、内容的にふさわしい(Best Match)順に並べられるので、とりあえずいちばん上の論文(Am Fam Physician. 2017; 96: 656-63.)を見てみました。

 

 するとこの論文はとても親切で、エビデンスをABCの3段階で示していました。いちばん上のAは「カプサイシン(日本の商品名トウガラシチンキ)8%貼付」「ガバペンチン(同ガバペン)およびプレガバリン(同リリカ)」「アミトリプチリン(同トリプタノール等)、ノルトリプチリン(同ノリトレン)、デシプラミン」の3項目でした。これらの薬についてPMDAの添付文書検索で適応症を調べたところ、帯状疱疹後神経痛にあてはまりそうなのは、リリカ(神経障害性疼痛)とトリプタノール(末梢性神経障害性疼痛)でした。

 

 トリプタノールの添付文書の「臨床成績」欄には「うつ病・うつ状態」と「夜尿症」についてしか記載がありませんでしたが、リリカの添付文書の「臨床成績」欄には日本人の帯状疱疹後神経痛患者を対象とした臨床試験の結果が載っており、元の論文にもアクセスできました(日本ペインクリニック学会誌. 2010; 17:141)。この論文によると、介入前に6.24だった疼痛スコア(0~10の11段階)が、介入後は、プラセボ群5.12、プレガバリン150mg/日群4.81、同300mg/日群4.26、同600mg/日群4.49とそれぞれ下がり、300mg/日群と600mg/日群はプラセボ群に比べて有意に下がっていました。とはいえその差は11段階のうち1以下で、大した効果ではなさそうでした。

 

 なお、リリカは「神経障害性疼痛」というざっくりした(?)適応のため、適応外使用による乱用が問題になっています(JAMA Intern Med. 2019; 179: 695-701.Web論座2019年1月22日池田先生ブログ)。